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長編はみだし話(番外編)
・目薬

目の前に立つ銀さんから視線をふいと外し、名前さんはもう我慢できないというようにごしごしと目をこする。

「こら名前」

そう言って、銀さんは名前さんの両手首を軽く掴んだ。

真っ赤になった名前さんの両目を息がかかるくらい至近距離で覗き込む。
離して、と名前さんが身をよじるけれど、銀さんは名前さんの手を離す気は無いらしい。
Sっ気が刺激されたのか、ニヤニヤといやらしい笑顔で名前さんを見てる。
パッと見、銀さんが名前さんをいじめているように見えるが違う。

「目ぇ擦ったら駄目でしょーが」
「だって痒いんだもの」

名前さんは花粉による目の痒みに悩まされているのだ。
幸いなのかなんなのか、くしゃみや鼻水といった症状よりも、目が痒くなる症状の方が重いらしい。
あ、ちなみに僕、志村新八はただ今部屋の掃除中です。
決して二人のことを覗き見してるんじゃありませんよ。
僕の前で勝手にこの夫婦がイチャイチャしているだけですから。

「目薬さしゃいいだろーが。」
「それがね………えっと、どうしても目に入らなくて」

恥ずかしそうにもじもじとする名前さんの言葉にぶっと銀さんと同時に僕まで吹き出してしまった。
そういえば、さっきまで洗面所の方で名前さんが「えいっ!」とか言ってた気がするけど、あれ、目薬さそうとしてんだ。

「何で俺に言わねーんだよ、ホレ目薬出しな。さしてやるよ」

銀さんは名前さんから目薬を受け取ると、キャップを外し名前さんの顎を指で少し上に向かせる。
名前さんは銀さんにされるがまま、銀さんの瞳を真っ直ぐに見つめ顔を上げた。
銀さんの髪の毛とは比べ物にならないくらい綺麗な名前さんの髪の毛がその動きに合わせてさらりと揺れる。
桃色の艶々とした名前さんの唇が微かに開いた。
銀さんが“するぞ”と合図を送るようにふっと微笑むと、名前さんは嬉しそうに笑って


目を閉じた。


「おいおい、目ぇ閉じたら目薬入んないでしょーが。キスする為にこーしてんじゃねーんだよ」

優しい優しい声で珍しく銀さんが名前さんに突っ込んだ。
ああよかった。銀さんが言わなければ僕が突っ込んでたところだよ。

「やだ私ったら、ごめんね銀さん」

と、名前さんがそう言って目を開けると同時に銀さんが目薬を一滴落とす。

「ひゃあ!」

それは少しの狂いもなくバッチリ目に落ちた。
銀さんは続けて素早く違う方の目にも一滴。今度は変な声を出さなかった名前さんが「銀さんありがとう」と瞬きをする。

「どーいたしまして」

名前さんの瞳から流れ頬を伝う目薬を指で拭いながら、銀さんは再び名前さんの顎を持ち上げ唇を塞いだ。






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