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長編はみだし話(番外編)
・今も変わらず

「そういえば銀さんって、名前さんのどういったところを好きになったんですか?」

新八の口から唐突に放たれた言葉に、銀時はソファに寝転び読んでいたジャンプから視線を上げると、ゆっくりとした動作で身体を起こし、無意識に名前の居る台所の方へと目を向けた。

「どういったところ……? 何だよ新八、いきなり」
「なんとなくですよ」

依頼もない、ただただゆるやかに時間の流れる午後の万事屋で、何もやることのなく退屈していたのだろう。
どうしても聞きたいという感じではなく、ただふと頭に浮かんだことを言葉に出しただけといったように、
新八は眼鏡の下のくりっとした目にほんの少しの好奇心を浮かべ笑う。

「バカだな新八、銀ちゃんはまず名前のオッパイに惚れたに決まってるアル」
「おい神楽、それじゃあ俺が真っ先に名前の美乳にクラッときたみてーじゃねぇか。
 違うかんね、確かに名前ちゃんは形も大きさも柔らかさも銀さんの超ドストライクなナイスバディをしてっけどな、名前の魅力はそんだけじゃあねえんだよ、ふわっふわの胸だけじゃねえんだよ!」
「わかってますよそんなこと。あ、じゃあ笑顔が可愛いところとかですか?」

ほがらかに笑う名前、恥ずかしげに笑う名前、その笑顔を向けられるだけで、心が満たされる。
頭をボリボリとかきながら銀時は「んー」と間の抜けた声を出すと、ふっと表情を緩ませた。

「ってかよ、今更どこに惚れたとかって聞かれてもわかんねーよ。俺ァ名前と出会ってすぐ惚れてたかんね。心に直接クるもんがあったっつーか、根こそぎ持ってかれる確信があったんだよな」
「そういえば銀ちゃん変だったアルな、舞い上がってるってより、なんかやけに真剣だったネ名前がはじめて万事屋にきた時」
「あ、僕も思ってた。いつもの美人を前にしてデレっとする銀さんとは少し違うっていうか」

二人にそんなことを言われ、銀時はその頃のことを思い出した。
怯えきっていた名前が、銀時を見上げて初めて笑顔を見せてくれた時、一生をかけてでも護りたいと思った。
自分以外に名前は護らせたくないと、すでに名前に対して独占欲のようなものを持ってしまっていた。
そして今もその思いは変わっていない。
それどころか共に月日を重ねる中、更に強くなっているように思う。



「みんなー、何の話してるの?」

台所から、たくさん剥いたりんごを乗せた皿を手に、名前がにこにこと笑いながら顔を出した。

「なぁに、ちっとばかし前のことをな」
「前? 私がくるよりずっと前のこと?」
「お前と出会った頃のこと」

そう言って銀時が手招きして、名前を横に座らせる。
新八と神楽がりんごに手を伸ばす中、銀時は微笑んで名前の顔を見つめてきた。

「どこって言われてもなー……わかんねーよな、顔も性格も最高だしなー絞れっつー方が無理だよなァ。つーことは全部か? やっぱ全部なのか?」
「銀さん?」

ぶつぶつと聞き取れるか聞き取れないかくらいの声で小さく呟きながら、銀時は名前の頬や唇を指でひとつひとつ確かめるように撫でてくる。

「全部ってなあに、どういう意味?」
「声もだな」
「?」

本気で意味がわからず、困った顔をして首を傾げた名前に「仕草もヤベーよな」と銀時は一人うんうん頷いた。



「新八くん神楽ちゃん、銀さんがおかしいよ」
「おかしいのはいつもじゃないですか」
「そうネ、銀ちゃんはいつも通り絶好調におかしいアル」





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あきゅろす。
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