[携帯モード] [URL送信]

長編はみだし話(番外編)
・バーゲンセール


「女ってーのはバーゲンだのセールだのが大好きだなァオイ」

銀時はズゴゴと大きな音を立ててカップの中にわずかに残ったストロベリーシェイクを飲み干すと、名残惜しげに唇からストローを外した。
かぶき町の商店街では今、50%60%オフが当たり前のサマーバーゲンをやっていて、
今日は気温も湿度もそれほど高くないのどかな夏の日だというのに、通りを歩く女達の瞳はお買い得品を求めメラメラと燃え上がっているように見える。

「ちったァ付き合わされる男の身になってみろってんだ」
「何言ってるんですか銀さん。アンタが買い物に行く名前さんと神楽ちゃんにわざわざついてきたんでしょうが。しかも僕まで強引に連れてきて」
「いや、だってよ、今日の名前ちゃん見ただろ新八。バーゲンだーつって朝からすんげーご機嫌で超可愛かったじゃん」
「それと銀さんが買い物についてくるのと何の関係があるんですか」
「これといってないな」
「ないんかい!」

新八の突っ込みにふっと笑うと、銀時は遠くを見つめるようにして目を細める。

「きっとあいつはさ、自分のモンなんて目もくれずに俺達のモンばーっか買ってにこにこ笑うんだよな」
「ああ、ありそうですね」
「そこで俺の出番ですよ新八くん。神楽と荷物はオメーに任せて、俺は名前ちゃんに何か買ってやろうと思ってよ」

銀時の言葉に、新八はそれで自分も連れてこられたのか、と納得した。

「きっと名前さん、すごく喜びますよ」

普段滅多に見せることの無い新八の銀時に向けられた真っ直ぐな憧れや尊敬や、そんなものを含んだキラキラと眩しい眼差しが恥ずかしいのか、
銀時は「だといいけどな」とむずがゆそうな表情であからさまに顔を逸らした。



「銀さん、新八くん、お待たせ!」
「めっさ買ってきたアルよ!」

名前と神楽が両手に袋を持ち、ツヤツヤとした顔で銀時達の前に足取りも軽く戻ってきた。

「見て、銀さんと新八くんのTシャツに神楽ちゃんのパジャマ、定春には犬用シャンプーでしょ、あとねあとね、」

そう言って名前が出してくるものは、先ほど銀時が言った通り銀時達のものばかりだった。
銀時はウキウキと戦利品を手にする名前にゆるく優しく愛しげに微笑むと、ゆっくりとベンチから立ち上がる。

「名前」

どこまでも甘い声で名を呼ぶと、銀時は名前の肩をそっと抱き寄せた。

「二人っきりで歩かねえ?」

そう銀時に耳に吐息がかかるほど近くでそう囁かれ、名前はそれは嬉しそうに「うん」と言って表情をいっそう柔らかくして笑う。

「ぱっつぁん、後は頼まァ」
「はいっ」

銀ちゃんどうしたアルか、と首を傾げる神楽に新八がにこりと笑い、歩き出した銀時たちに聞こえないよう神楽の耳に手を当てる。

「銀さん、名前さんにプレゼントを買ってあげたいんだって」

言い終わるなり、二人で笑った。




「安くなってる今のうちに何でも遠慮なく言いなさい」
「ありがとう銀さん。でも私ね、欲しいものってそんなにないんだ」
「金のことなら心配すんな。先日入った臨時収入をパチンコに突っ込んだら結構な額になってだな」
「えっ!? じゃあそれで滞納してる家賃が払えるね」
「オイオイオイオイ、家賃なんざ2,3ヶ月滞納してても死にゃしねーんだよ。それよりこの金は名前に何か買ってやる為に使わねーように頑張ってきたんだからね!? 銀さんの努力無駄にすんなよ!」

[*前へ][次へ#]

17/70ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!