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長編はみだし話(番外編)
・日常のひとこま(拭き掃除編)

「ごめんね銀さん、机拭かせてね。ちょっとだけ足をおろしてくれたら嬉しいな」

机に足を乗せるという、これで二十をとうに超えた大人とはとても思えないだらしない格好でジャンプを読む銀時に、名前はどこまでも優しく声をかけた。

「んー? ああ、悪ィ」

銀時はそう言って足を動かすと、そのままおろすかと思いきやその足をひょいと机から浮かせる。
拭き終わったらまた乗せるつもりなのだろう。
しかし名前はそんな銀時に呆れる表情ひとつも見せず「ありがとう」と微笑んで急いで机を拭きはじめた。

イチゴ牛乳でもこぼしたのか、ぺとぺとになった丸いグラスの輪郭の跡や、お菓子のカスなどを名前は台拭きで丁寧に拭き取っていく。
そうやって名前が一生懸命手早く拭こうと手を動かしていると、ふと銀時の視線が自分に注がれていることに気付き、ふわりと微笑んだ。
おもむろに机を拭きつつ銀時に内緒話をするかのように顔を寄せ、そっと頬に柔らかな唇を当ててくる。
銀時はその感触に目を細めると、さりげなく顔を動かし唇への口付けもねだった。
するとすぐに、ちゅ、と小さな音を立て、銀時の望み通りに唇にごくごく軽く名前の唇が重ねられる。
名前の唇の感触は、まるで身体中が桃の色をした人肌の液体にとぷんと甘くゆるやかに包み込まれるような錯覚を起こし、銀時の心をひどくくらくらとさせる。
もっと欲しくてたまらなくなるのだ。

「はい、お待たせ銀さん。足、もういいよ」
「じゃー遠慮なく」

銀時はそう言って椅子を少しばかり回転させると、浮かせた足を綺麗に拭かれた机の上に乗せるのではなく、がばりと開いて名前の身体を挟み込み、自分の方へと引き寄せた。

「わ!」

ジャンプは拭き終わった机に適当に伏せた。きっとページは読んでいた場所と違うところへ伏せられただろう。けれどどうでもいい。
両手で両足で名前の身体を抱しめる。
バランスを失った名前の身体の重みを全て受け止めるように強く抱しめ、腕の力を緩めた。

名前が顔を上げ、至近距離で微笑み銀時へ甘い瞳を向けてくる。
溶かされてしまうかのような名前の熱い眼差しに応えるように、名前の後ろ髪に指を差し入れると、
それを合図に、互いに互いの唇を奪いあうような口付けをはじめた。






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