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EDGE OF THIS WORLD(完結済)
万事屋の一員
「はい、これお弁当。みんなで仲良く食べてね」

にこにこ顔の名前が持った大きな重箱を包んだらしき風呂敷包みを見て、銀時と新八と神楽は三人揃って「おおー!」と目を輝かせた。

「僕達の為にわざわざ作ってくれたんですか?」
「うん。お天気いいから、わざわざここに帰ってくるよりお外で爽やかに食べるのも気持ちいいかなあって思って」

すみません、と新八が名前の手から弁当を受け取ろうとしたその時、横から伸びてきた手にひょいと風呂敷包みを奪われた。
「なっ!」と新八が眉を寄せそちらを向くと、銀時がべーと新八に向かって舌を出している。
その余りにも大人気ない態度に新八の顔中にたちまち怒りの血管が浮き出した。

「俺の為にあんがとな、名前。愛してるぜ」

新八に向かって一瞬不敵な笑みを見せた銀時が、自分の特権とばかりに名前を片手で抱き寄せ頭にすりすりと頬ずりしながら言う。

「そ、そんなこと言われると照れちゃうな…でも、たいしたオカズは入ってないからあまり期待しないでね」
「そんなこと関係ないアル!名前が作った弁当、今すぐにでも食べたい気分ネ!」

神楽が無邪気に風呂敷包みへと手を伸ばすが、銀時によってひょいと手の届かないところまで高く持ち上げられ、ぶーと頬を膨らませる。
くすくすと楽しげに笑う名前に愛しげに顔を緩めたその時、銀時の視界に小さな包みが映った。
台所の作業台に乗せられたその包み。
形からして一人分の弁当箱のようだった。
きっと銀時達の弁当を作ったついでに自分の分も作ったのだろう。
大きな風呂敷に包まれた立派な重箱と比べ、余りにも小さくて、つつましくて、さみしげに見える。
銀時の脳裏に、それを一人きりの万事屋で食べる名前の様子が浮かんだ。

「名前」
「なあに?」
「……押入れにでっけーブルーシートがあっからよォ、昼になったら持ってきてくれや」
「うん、わかった。探して持っていくね」

最初から持っていかないのかな、と、少しだけ不思議そうな表情を浮かべたものの、名前は任せて!と笑う。

「オメーの昼飯も忘れんじゃねーぞ」
「え?」
「折角の弁当だ、みんなで食った方が美味ェだろ」

万事屋の仕事は名前のような非力な女性には向かないものが多い。
頑張るからと、何度となく銀時に手伝わせてと頼んだが、その度にやんわりと断られ続けてきた。
名前自身もわかってはいるのだ。自分が何の役にも立てないことを。
だからせめて、少しでも喜んでもらえたらと弁当を作ったのだ。
三人がそれを食べてるところを見れないのが残念だったが、勢い良く平らげてくれているところを想像すれば、一人で食べるお弁当もさみしくないだろうと、そう思っていたのに。

「仕事場に私がお邪魔していいの?」
「いいに決まってんだろ」

一緒に仕事できなくたって、名前は万事屋の一員なのだと、銀時の柔らかな瞳がそう言っている。

「ありがとう、銀さん」

ぱっと、花が開くように名前が笑う。
嬉しさを抑えきれないように、頬を染めた名前は口元を緩めてぎゅっと銀時に抱きついた。




「先に行ってようか、神楽ちゃん」

二人の唇が重なり合う前に、新八と神楽は背を向けてスタスタと玄関に向かって歩き出した。

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