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EDGE OF THIS WORLD(完結済)
一緒に行こうどこまでも
「ねえ銀さん、今夜ね、神楽ちゃんがお妙ちゃんのところへお泊りに行くらしいの」
「ほー、そりゃ今晩が楽しみだな。神楽が居ちゃできねーよーなコトじっくりしっぽり行くか、なァ名前ちゃん」

冷蔵庫の野菜室からもやしを取り出した名前が、にやけ顔で自分を抱き寄せてくる銀時を見上げ眉をハの字に下げる。

「ごめんね銀さん、私もそれに誘われてて。女同士ガールズトークしないかって」
「ハッ、ガキに女ゴリラと名前ってか。そりゃ名前はいい女だとは思うがもうガールって年でもねーだろ。大人の女は大人の男と過ごしときゃいいんだって」
「何か色々酷いこと言われたような」
「言ってませーん。事実だしぃ。ってかそのメンバーで何喋るんだっつー話だよ。どーせろくでもねェ話ばっかだろ」
「そんなことないよ! ほら……こ、恋バナとか……?」

名前はいかにも苦しげに、銀時から目を逸らしつつ反論する。
神楽と妙とする恋の話など、名前自身にも想像がつかないのだろう。

「恋バナねェ。ナイナイ。300円賭けてもいいぜ。どーせ神楽とお妙がマシンガンの如く俺のこと扱き下ろすだけだっての」

銀時がそう言いながらわざとらしく悲しげな表情を作る。
そんな表情を見て、名前がみるみる慌てだした。
内心、銀時がほくそ笑んでいるだなんて名前は想像もしていないだろう。

「あーあ、名前が俺の悪口吹き込まれて俺のこと嫌いになったら俺どうしたらいいんだろうなァ」
「嫌いになんか絶対にならない! 私が全部否定するから!」
「今夜は一人寂しく名前の枕抱えて過ごすわ。きっと眠れねーだろうしな……」

この銀時の言葉に、名前は胸にこみ上げる甘苦しい感情のまま銀時にぎゅっと抱きついた。
名前が手に持ったままのもやしが銀時の背中に当たってモシャッという何とも緊張感の無い音を立てる。

「銀さんにそんなこと言われたら行けなくなっちゃうよ」
「いや、俺のことはいいから言って来い。一晩だけこの淋しさをなんとか紛らわしてみせっから」

名前の耳元に息を吹きかけるように囁き、柔らかな耳たぶを唇で挟む。
その刺激にびくりと身体を震わせた名前を強く抱きこみ、名前の形の良い頭を大きな手のひらで撫ぜた。

「ごめんね、銀さんごめんね、私銀さんにそんなに淋しい思いさせるなんて考えてなかった」
「名前……」
「銀さん……」

ヨッシャー!あと一押し!と心の中でガッツポーズを取りつつ、淋しげな表情を保ったまま名前の唇を塞ぐ。
名前を強く求めていることを伝えるように、深く深く重ねる口付けは、まるで吐息まで絡め取るかのように艶かしく情熱的に攻め立てた。
余りにも官能的なその口付けに、唇が開放された直後、名前は少しの間ぼうっと放心してしまう。
そんな名前に優しい笑みを浮かべ「名前」とちょんと頬を指で突けば、ハッと名前の瞳に焦点が戻る。

「気持ちよくてぼーっとしちゃった……」

頬を染めながら素直な感想を零す名前に銀時が笑みを深めた。

「今夜、これ以上のもっと凄いコトしようぜ?」
「でももうお泊り会に行くって返事しちゃったんだよ。断るのも悪いし私も楽しみにしてたんだ」
「……そっか、そうだよな……悪ィな……銀さん頑張るわ。名前が居なくてもなんとか耐えてみせっから」

銀時は淋しげな表情で無理に微笑み、名前にしか通用しないような大根演技を続ける。
名前が行かないというまで続けてやろうと思ったが、事態は思わぬ方向へ流れた。

「銀さん、大丈夫だよ、私いいこと考えちゃった!」

銀時の胸から明るい笑顔で見上げてくる名前に、嫌な予感に唇の端を引きつらせながら「な、なにかなあ」と続きを促す。

「銀さんも一緒にお妙ちゃんのお家に行けばいいんだよ!」
「え」
「私と同じ屋根の下なら淋しくないよね」
「え」
「ちょっと待ってて、お妙ちゃんに電話して銀さんも一緒にいっていいか聞いてくるから」
「名前、ちょっと待った」
「銀さんは新八くんとボーイズトークすればきっと楽しいよ」
「眼鏡とどんなボーイズトークぅぅぅぅ!? フレームの具合だとか度の強さを話すワケ!?」
「あはは、面白いなあ銀さんってば。その調子その調子!」

じゃあちょっと電話してくるね、ともやしの袋を銀時に渡し、名前はパタパタと台所を出て行ってしまった。

「マジかよオイ」

手の中のもやしに向かってそう力無く呟くと、ガクリと項垂れる銀時だった。





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あきゅろす。
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