[携帯モード] [URL送信]

EDGE OF THIS WORLD(完結済)
赤飯

------------------------
※第四百十九訓の原作に沿ったお話です。
私の筆力では原作を読んでいないとチンプンカンプンかと思われますのでお気をつけ下さい。すいません。
今後の展開によっては辻褄があわなくなる可能性もございます。
------------------------



「やだ、スプーン忘れちゃった。ごめんね銀さん」

皿の上に乗ったプリンをことりと銀時の前に置くと、名前は自分の失敗を謝りながら照れくさそうに笑う。
すぐに持ってくるね、と言う名前を銀時が椅子に座ったままちらりと見上げると、いいっていいって、とその細い腕を引っ張り自分の腿の上に腰かけさせた。

「おーい新八、スプーン」

重そうな瞼の下の瞳で名前をしっかりと見つめながら、銀時は気の抜けた声で台所に居る新八を呼ぶ。
「もー、銀さんったら」と名前が笑うと、銀時も悪戯っぽく口の端を緩めた。
ふっと二人の間に沈黙が流れる。

「……」

名前、と銀時は声に出さず唇だけで名前の名を呼ぶと、その白い陶器のような頬を優しく撫でた。
どちらからともなく顔の距離を縮め、唇が重なろうとしたその瞬間、大きな音を立てて万事屋の玄関から銀時のところまで、真っ直ぐに電信柱が突き刺さる。
それを眉ひとつ動かさずひょいと顔をずらし直撃を避けていた銀時は、細かな破片から守る為にとっさに膝に座る名前を腕の中に抱きしめていた。

その電信柱を万事屋に投げ込んだのは、神楽の父親の星海坊主だ。
神楽に会いに地球へやってきた星海坊主が、偶然神楽が友達らしき男の子にラブレターで告白されているところを目撃してしまい、
神楽にどんな教育してきたんだとハゲあがった頭に血を上らせ、こうして襲撃をかけてきたのである。

そんないきなりの出来事にびっくりしたのか、そのまま銀時の腕の中でじっとしていた名前だったが、数分経った後に「首、首が痛い…」と情けない顔でひょこりと銀時の腕の中から顔を出した。
「わわ、悲惨…」と、とんでもないことになっている事務所に絶句した後、見知らぬ男性が銀時に掴みかかっていることに気付き、
とっさに膝の上に座ったまま銀時の頭を庇うように抱きしめ「やめてください!」と震える声でキッと星海坊主を睨む。
そんな名前に、銀時は眠たげな瞼を大きく見開き、怒りを露にしていた星海坊主の表情はみるみる和らいでいった。

「あ、紹介しますねお父さん、この超可愛い子、俺の恋人です。てか妻っつってもいいかもしんねーな。つー訳でこいつのことやらしい目で見たりなんかしたらただじゃおかねーから」
「えっ、銀さんのお父さん…?」
「ちげーって、神楽のとーちゃん」
「ええっ!?」

初めまして苗字名前です、と名前は銀時の膝から下り、星海坊主に向かって丁寧に頭を下げた。
でれっとした顔をして星海坊主も「いつも神楽ちゃんがお世話になってます」とつるりとした頭を撫でながら笑う。

「ところで、お父さんはどうしてこんなことを…?」

ちょっと困った顔をしてあちこち破壊された万事屋を見渡す名前の言葉にハッとして思い出した。
星海坊主は忘れかけていた怒りを再び燃え上がらせ「てめェェェ!」と銀時に掴みかかる。

「ただいまー」

そんな時、神楽がいたって普通に帰ってきた。
むふふ、とどこか浮かれた顔をしている神楽を見て、名前の女の勘が楽しげな気配を感じ取る。
すぐに名前のその予感は的中することとなった。
神楽はにかっと笑って彼氏ができたと爆弾発言を放り投げると、キャーと飛び跳ねる名前と瞬間冷凍されたかのように凍りついた男三人を残し、ドライな態度で部屋を出て行ってしまった。

「神楽ちゃんに彼氏!ねえ銀さん、私達に紹介とかしてくれるかなあ。わわっ、こうしちゃ居られない!お赤飯炊かなきゃお赤飯!」

動けない星海坊主と銀時と新八の三人。
一方できゃーきゃーと頬を染めながら一人はしゃぐ名前。
銀時の腕に自分の腕を絡ませ銀時を見上げながら「お夕飯はお赤飯でいいよね」と同意を求めるものの、当の本人はまだ状況を把握しきれないとでもいうようにフリーズしている。
そんな銀時の様子にふふっと笑うと、名前は買い物籠と財布を手に取り

「小豆ともち米買ってくるねー!」

とスキップしながら凍りつく男三人をそのままに万事屋を後にした。





[*前へ][次へ#]

19/70ページ

[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!