[通常モード] [URL送信]

まわる。マワル。廻る。
壱の七

名簿と席を忙しなく、キョロキョロと順番に目をやりながら、名前を読もうと奮闘する。

「あ、あ、あい、ざわ、………あ、相澤………、……………。」

漢字が読めないらしい。
まぁ、無理もない。 今時の子どもの名前はなかなか、難しい読みをするからな。

「かなと、です。 相澤海夏人。」

「あっっ、有難うっ!」

そう言って、太郎…、いやいや、先生は垂れている目をさらに垂れさせた。

くすっ。可愛いヤツめ。

「えぇーーっと、つ、次っ。次っ。 い、伊熊…………、伊熊………、
 か、かお、……こ……?」

違うぞ。太郎よ。 いやいやいや、先生よ。

前の席の伊熊は、ギロッと先生を睨みつける。
先生は、どうしよう、どうしようって感じで、オロオロし出す。

オロオロするのは可愛いけれど、流石に可哀相だから、助けてやるとするか。

「先生っ! 伊熊君は……“くんじ”…。 薫児君です!」

そうすると、なぜか伊熊に再び、ぼっと火が点いた。 後ろから見ても、耳が真っ赤だ。

なぜだ? 下の名前で呼ぶのは慣れなれしかったか?

「おおおおおっ、おまっ、おまえっっ、お前っっ!!!」

「薫児君って…、呼んじゃ駄目だった…?」

伊熊が何か、また暴言を吐きそうだったので、心配そうな顔をして、こてんと首を傾げることで先手を打った。

「っっっ!!! かっ、か、勝手にしろっっ!!」

ふふっ。 全く、伊熊、いや、薫児は照れ屋なのだから…。
真っ赤になって慌てふためく姿は、少しは可愛げがあるな。

「つ、つ、次は……、お、大塩、な、波輝…君……?」

「はいっ!」

今度こそ見事読むことが出来たらしい。
少しは太郎…、違った違った、先生も落ち着いてきたな…。

その後も出席確認は続いていく。

ここ大海小の特殊な点、その2。 それは少人数制であること。
このクラスには全部で24人しかいない。 ちなみに、女子は10人。
一番少ない学年では、1クラス20人の所もあるらしい。

そして、クラス数が少ないこと。 1学年3クラスの、全18クラス。
それゆえに、クラス替えと言っても、高学年にもなれば、皆顔見知りであったりする。

太郎……、違った、先生は挙動不審で、頼りないのは変わりないが、
もう大分、人並みにはスムーズに話せるようになっていた。

今日は短縮日課で3時間授業、あるのは学級活動のみ。

リンゴーン リンゴーン

あっ! 一時間目終わりの合図だ。

なんとっ!
うちのクラスは先生の自己紹介と、出席確認だけで1時間使ってしまったとは……。
なんて要領の悪い…っ! なんて頼りない…っ! なんてっ、なんてっ、可愛いヤツなんだ…っっ!!


[*前へ][次へ#]
[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!