まわる。マワル。廻る。 弐の二 どうにか上履きを取り戻すことに成功した俺は、自分の教室に向かう。 近づくにつれて、あの怖ーい怖ーい声が聞こえてくる気がするのは…、きっと気のせいだよね…? 教室の壁に手をかけ、ぷるぷると震えながらも、そっと中を覗き見た。 すると――、教壇に立つ狐目めがねの先生と目がバチッと合った。 「ぅ゛、〜〜っ!!!」 う゛ぎゃーーーっっ!! おっ、おっ、おっ、落合先生だぁーーっ!! おっ、おっ、怒られる!怒られちゃう! なっ、なっ、泣かされる!泣かされちゃう! ごめんなさいっ!ごめんなさいっ!ごめんなさーーいっっ!! うえーーんっ。 怖くて怖くて、一人心の中で泣き叫んだ。 咄嗟に口を両手で塞ぎ、絶叫をを漏らさなかった俺を褒めてやりたい。 廊下でぷるぷると震え、半べそかいている俺。 ――中に入る勇気のない臆病な俺を、どうかお許し下さい…。 「それにしても…、沢野先生は大丈夫だろうか。 心配だね? 早く帰ってくるといいけど…。」 「沢野先生、倒れちゃうなんて可哀相です。」 「早く元気に戻って来るといいですね。」 教室から落合先生の意外な言葉と、子ども達の心配する声が聞こえてくる。 あれ? もしかして…ここに居ることばれてない? しかも――、なんだか落合先生が優しいっ! 実は普段は優しい先生なのかもっ! 「そうだね。 でもね……、あまりに待たせるようなら――。 短気で待つことが嫌いな私は、こみ上げてくる怒りに耐えられそうにないのだよ。 ふふっ。あと1分以内に来なかったら、お仕置きをしてやろう。あぁ、どんなお仕置きがいいだろうかぁ!」 背中にぞくぞくっと悪寒が走った。 ――やっぱり優しくないっ! お仕置きは嫌だぁーーっ!! 「ごめんなさいっ!ごめんなさいっ!!ごめんなさーーーーいっ!!」 気付けば、俺はごめんなさいを連呼しながら、教室に飛び込んでいた。 …………。 不審者が乱入してきた並に、注目を浴びている俺。 痛い目で見ている子20人。無関心な子2人。笑っている子1人。キラキラした目で見ている子1人。 そして――、グサグサ突き刺さる鋭い目で見ている大人一人。 「おやおや、何を慌てているのかな? 沢野先生?」 「え…っ! だって……、先生が……。」 怖かったんだもん…という呟きは飲み込んでおく。 余計怖くなることは明らかだったから。 「まぁ、いいだろう。確りしてくれたまえよ、沢野先生。」 俺より少し身長の高い先生に、上から見下された状態で、お尻をバシバシと叩かれた。 うぅーー痛いよぉ……。絶対本気で叩いてる…っ。 「ごっ、ごめんなさい…。」 再度謝罪をしたら、漸くお尻を叩くのを止めて退室していった。 [*前へ][次へ#] [戻る] |