silent child 8 恐いけど……、めちゃくちゃ嫌だけど……、仲間と一緒なら、少しはがんばれそうな気がする。 「憲太、どうするー?」 「ケンタッ、どーすんのー?」 (僕は……) 「……っ、……行くっ。」 行くにしても行かないにしても、恐くて恐くて堪らなかったけど、僕は、仲間と一緒に行く決意をした。 恐いけど、一人じゃない。仲間が居る。 「よぉーしっ! 皆で行くぞっ!!」 「よっしゃーっ!! 4中に初乗り込みだぁー!!」 大和とマサキは気合を入れていた。 二人を見ながら、そう言えば、マサキは他校生だったな、とか、僕達私服なのにいいのかな、とか、秋休みなのに学校に入れるのかな、とか変な心配ばかりしていた。 「こういう時こそアレっしょ! ほらほら、手ぇ出せぇー!」 マサキは自分の手を前に出す。 「はいはい。」 大和もその上に手を重ねた。 「ちっ……、相変わらずハズイ奴等。」 文句を言いながらも、ダイキも手を重ねた。 僕も、皆の上に手を重ねた。 「騒いで騒いで騒ぎまくれっ!! noisy boys、4中に突撃だぁーー!!」 「「「「おぉーーっ!!」」」」 円陣組んで、皆で気合入れたら、少しは恐怖も薄まってきた気がする。 「突撃ーっ!! 急げ急げっ!!」 そのノリのまま、スタジオから飛び出ていく皆。僕も慌てて後に続く。 店内まで走ったところで、カウンターにテツさんを発見した。 「テツさん、メンゴーーッ! また後でちゃんと戻ってくるからっ! ヨロピクーッ!」 「テツさん、ゴメンッ!! こいつちょっと預かっていてっ!!」 「悪いっすけど、ヨロシクー。」 テツさんの返事も聞かず、勝手に荷物をテツさんの足元に置き出す皆。 (テツさん、ごめんっ!!) 心の中で謝りながらも、僕も相棒をテツさんの傍に置いた。 「こっ、こらぁーーっ!! 待ちやがれっ!! こんのっ、クソ餓鬼どもーーっ!!」 テツさんの怒鳴り声をバックに、僕達は走り去った。 3時50分――。 僕達は、応接室の窓の前。壁を挟んだ校舎裏の地べたに座っていた。 窓を薄っすらと開けているから、声が聞こえるはず。お母さんと矢口先生はまだ来ていない。 でも――、直に始まっちゃう。 (恐いっ! 恐いっ!! 恐いよっ!!) 恐くて堪らなくて、必死に肩から伝わる体温を感じていた。 肩をくっつけて、右には大和、左にはマサキが居る。壁に背中を預け、横一列。 ダイキは僕の正面で、ヤンキー座りをしていた。 僕は、仲間に囲まれて居て、一人じゃないってことを、必死に感じていた。 バタン ドアの開く音。僕の心臓と一緒に、僕の体は飛び跳ねた。 [*前へ][次へ#] [戻る] |