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silent child
13

 それを考えたら……、何だか大和に悪いことをしたなって思えてきた。
 最近の僕は、カレンの話ばかりしていたし、大和のメールや電話よりも、カレンの方を優先していたから……、大和にとっては、面白くなかったかもしれない。

 大和は女子にモテるけど、僕を放ったらかしにして、女子の方に行ったりなんてしない。
 なのに僕は、大和のことを放ったらかしにしていた。
 大和が機嫌悪い理由は僕だったのに……、気の利かない僕。ちょっと反省した。

 これからは気をつけよう。

 彼女とか、そういうのは当分いらないな。
 だって、大和とずっと一緒に居る方が、絶対楽しいから。
 大和もきっと、同じことを考えていると思う。

――まだ暫くは、彼女とか作らないで……、今まで通り、ずっと一緒に居ようね。

 そう思っても、そんな恥ずかしいこと、素直に言えるはずもない僕。
 とにかく大和にちょっかいが出したくて堪らなくて……、足元の水溜りを思いっきり蹴ってみた。大和の方に向けて。

バシャッ
「この、やろっ!やったなぁー!」
「大和、ぼぅっとしてるんだもん。」
 ジーパンの膝下びっしょりになった大和を笑ってやる。
「お返しだっ!」
バシャッ
「うわっ!冷たっ!!」
 僕も大和と同じ格好になった。

 やり返そうとしたら、大和が小走りになる。僕も小走りになって、大和を追いかける。
 その後はお互い、やって、やり返しての繰り返し。こんな下らないことをしている僕達は、まるで小学生に戻っちゃったみたい。
 でも、頭の片隅には、背中のケースにはかけないようにしようって、ちゃんと大人な考えも残っているんだから、笑っちゃう。

 家に着く頃には、足元はびちょびちょだった。その代わり、僕達の気付かない間に、雨はすっかり上がっていた。

*****


 今日のライブは、高校生以下バンドの合同ライブ。berryberryっていう小さなライブハウスが企画した、クリスマスイベント。
 高校生以下がターゲットだからなのか、参加料も安く、初心者も多いということだったので、僕達もエントリーした。

 前座以外で出るのは初めてな僕達。マコトさん達と、別々なのも初めて。
 マコトさん達は、クリスマス当日に、ワンマンライブをやるらしい。
 ワンマンライブには確かに憧れるけど、今の僕達には、noisy boysとしてちゃんとしたライブに出れるってだけでも、十分嬉しい。

 さっきライブハウスに入ってくる時に、見慣れた顔がちらほら見えた。告知してあったから、ファンも観に来てくれたみたい。もちろんその中には、カレンも居た。

――カレンのためにも、僕のためにも、今日のライブは頑張りたい。


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