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silent child


『ケンタ君へ


 これで私の手紙も三通目ですね。ただのファンの一人である私に、丁寧にお返事をくれるケンタ君は、優しい人だと思います。

 ケンタ君は、怖いから変われないのではなく、なぜだか分からないけれど、なかなか変われないのだということを聞き、少し驚きました。
 原因が分からないと、克服するのは大変だと思います。それでも頑張るケンタ君は、やっぱり凄い人です。

 私は、単純に怖くて変われないんです。
 小学校からの持ち上がりも半数以上いる中学校で、私が急に変われば、注目を浴びてしまうことを知っているからです。

 私の他にも、実は嫌なあだ名で呼ばれている子がいます。きつめの天然パーマがかかっていて、2つしばりにしている女の子なのですが、皆は「ちりちり」とか「ボンバー」とか酷い呼び方をするんです。私からすれば、天使のような髪で可愛いと思っていたのですが、皆がからかうため、その子にとっては、やっぱりコンプレックスだったのだと思います。

 ある日、その子がストレートパーマをかけてきました。
 自分から変わったその子を、私は素直に凄いなと思いましたが、皆の受け止め方は違いました。
 その子のクラスの前に、休み時間の度に、人だかりが出来るんです。皆は変化を面白がって、次々に人に言いふらし、また次々に人を集めました。
 一日中、泣きそうな顔をして、ずっと下を向いていたその子の姿を、今でもはっきりと覚えています。
 その次の日、その子はばっさりと髪を短く切ってきたんです。サラサラのストレートに憧れていたはずなのに……。

 皆の当たり前と違う子が、変わろうとすると、凄く注目を浴びてしまうんだと知り、私は一気に怖くなりました。
 きっと、私が前髪を切ったとしたら、同じことが起きるのだと思います。だから、益々怖いんです。

 凄く怖いけど、それでも、ケンタ君が一緒に頑張ってくれると思えば、勇気が沸いてきます。

 一緒に、少しずつ変われるように、頑張りましょう。
 私はケンタ君を応援します。もしもケンタ君が良ければ、私のことを、ほんの少しでもいいので応援して下さい。そうしたら、もっと頑張れる気がします。



カレンより』



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