silent child 4 聞かなくたって、何でそう呼ばれているなんて分かる。本当の名前がカレンで、前髪がそれっぽいから……、ノレンって呼ばれてるってことだと思う。 通称ってことは、皆がそうやって呼んでいるってことだよね。 ――それって、イジメじゃないの? 僕だって、ダンマリとか言われると、凄く嫌な気持ちになる。きっとこの子だって……、暖簾ちゃん、なんて言われるのは嫌に決まっている。 でも――、そんなことを思いつつも、僕も似たことをしているってことに気付いた。 名前が丸尾で、髭がそれっぽいからって、マリオって呼んでいる僕。 面と向かって言っていたとしたら、マリオ……、丸尾先生も傷ついていたかもしれない。 ちょっと反省した。 ――これからは、ギター弾いていない時でも、心の中で呼ぶ時でも、いつでも丸尾先生って呼ぶようにしよう。 「なぁなぁ、ケンター! 中、読んでみろよっ! ファンレターじゃなくて、ラブレターかもしれないじゃん!!」 マサキがそう勧めてくる。 「ラブレターッ?!」 大和もなぜか必死に体を前に乗り出して、僕を見つめてくるし、ダイキも興味津々って感じでこっちを伺っている。 (嫌だっ! 僕は一人でゆっくり読むんだ!) そういう気持ちを込めて、ぶんぶん頭を横に振って、手紙をまた、厳重に仕舞い込んだ。 その後は、「後で絶対教えろよ!」と皆に散々言われ続けた。 特に一番煩かったのが、大和。 「絶対だからな?!」と何回も念押しをされて、段々と面倒くさくなってきた。 (何をそんなにムキになっているんだろう?) 途中からは、てきとうに聞き流して、頷いていたってことは、もちろん秘密。 他の3人は沢山貰っているくせに、僕の時だけやたら騒ぐのは……、不公平だと思う。 家に帰って、即行で部屋に閉じこもり、ベッドの上で体育館座りをする。この体勢が一番落ち着くから。今は、心臓の音が煩くて、ちっとも落ち着けないけど……。 (初ファンレターかぁ) 封筒を見れば、やっぱりにやけてくる。 綺麗にシールを剥がし、ゆっくりと封筒を開けた。 中から出てきた便箋も、可愛い淡いピンク色。丸っこい小さな字もやっぱり可愛くて……、あの女の子の声を思い浮かべながら、一文字一文字ゆっくりと丁寧に読んでいく。 [*前へ][次へ#] [戻る] |