silent child 9 体をくっつけていたから、多分二人にまで、振動が伝わってしまったと思う。 折角皆が傍に居てくれているのに……、それでも僕は、恐くて堪らなかった。 左右にいる二人は、そんな僕を安心させるかのように、体を傾けて体重をかけてきた。 下を向いて居たら、頭をばしっと叩かれた。多分、ダイキの仕業。 重たかったけど……、痛かったけど……、何だか心地よくて、ちょっと落ち着く。 「どうぞお掛け下さい。」 「えぇ、失礼します。」 (始まっちゃった……) 壁の向こうから、お母さんと矢口先生の声が聞こえてくる。 「ご足労頂き有難うございます。 早速ですが、本題に入らせて頂きますね。本日、憲太君の成績について、緊急の学年会議を行いました。各教師達に、憲太君の成績評価が妥当であったか否かを確かめるためです。」 (僕は、成績なんてどうでもいいっ!) (妥当だと思っているっ!) 「それで? 見直してもらえるんでしょうね?」 お母さんの口調は、既にきつくなっている。疑問文なのは形だけで、否定することを許さないような言い方。 「単刀直入に申し上げますが……、成績を修正するようなことはいたしません。」 バンッ!! 「何ですってっ?! 一体どうしてよっ!!」 (やめてっ、そんなこと聞かないでっ!!) 何かを叩く音の後に、お母さんの怒鳴り声。多分いつものように、机を叩いたんだと思う。お母さんが凄く怒っている証拠。 (恐いっ、恐いっ、恐いよっ!) 「私を含め、教師達は皆、この成績評価は妥当だと申しております。」 「何が妥当だって言うのよっ! 納得出来ないっ!! あの子は何でも出来る子なのよっ?! テストだって満点近くとったって聞いたわ! それに提出物も何も問題ないって言ってたわ! あの子だって納得出来ないって言って、泣いてたわっ!」 (違うっ! 僕は違うっ!!) (何でも出来る子なんかじゃっ、ないっ!) (喋ることさえ出来ないっ!) (納得ならちゃんとしているっ!) (泣いたのは、恐いからだっ!) ――お母さんは分かっていない。お母さんは、僕を知らない。 僕は真っ赤になって、下を向いた。こんなことを、仲間に聞かれているのかと思うと、恥ずかしかった。 「何でも出来る子、ですか。お母さん、原因は全教科同じです。」 (やめてっ! 言わないでっ!!) 「何だって言うのよっ?!」 (やめてっ! 聞かないでっ!!) 「問題は――、発表です。」 (やめてっ! お願いっ、やめてよっ!!) 「そんなはずないわっ!! あの子は出来る時はしていると言っていたわっ! それが嘘だったとでもっ?! あの子が何も発表しないとでも言うのっ?!」 (やめてっ! お願いだからっ!) (嘘なんだっ! 僕は、喋ることさえ出来ないんだっ!) [*前へ][次へ#] [戻る] |