silent child 6 「まっ、ケンタにも色々事情があんだろ?大輝ぃー、あんま苛めちゃやぁよ?」 大和の隣でマサキも苦笑していた。 「ちっ、うぜぇっ! ピーチクパーチク泣きやがってよぉ! 煩くてしゃーねぇっ!」 マサキの隣で、ダイキはそっぽを向いていた。 泣き叫ぶ僕は、仲間に囲まれていた。 正面に立つ大和にぽんぽんと頭を軽く叩かれれば、もう止まらない。 いつものやりとりが始まる。 僕は大和に抱きついて叫びまくった。 お母さんに言いたかった……、伝えたかった……、聞いて欲しかった、僕の気持ち。ずっと喉に引っかかっていた本当の気持ちを大和にぶつける。 大和は一つ一つに「うん」を返してくれる。 僕は大和の前でだけ、泣くことが出来るはずだった。 僕は大和の前だけで、気持ちを思いっきりぶつけることが出来るはずだった。 大和の前でだけ、僕は僕になるはずだった。 だけど――、今はダイキが居る。マサキが居る。仲間が居る。 仲間が居る前でも、僕は僕だった。 叫び続ける僕を見て、マサキは呆気にとられていた。ダイキはもう慣れたのか、すました顔をしていた。 だけど、ちゃんと聞いてくれていた。僕の言葉を……、僕の気持ちを。 そんな大和にマサキにダイキが大好き。 そんな仲間が大好き。 僕は洗いざらい話した。 お母さんは僕を知らないこと。 お母さんが学校に乗り込むこと。 僕には、それが恐くて堪らないこと。 「ふーん、すっげぇ母ちゃんだなぁ。つーか、ケンタがヤマトにべったりな理由が漸く分かったような気がする。」 落ち着いてきた僕は、マサキの言葉を聞いて、急に恥ずかしくなった。慌てて大和から離れる。 (またおホモダチって言われる……) また馬鹿にされるんじゃないかって思って、ダイキをちらって見たら……、何だか難しい顔して考え事しているみたい。 「何つーかさ、ヤマトもケンタも分かり合ってて、信頼し合っていてさぁ。お互い大切に想ってんだなぁとか、長年一緒に居るだけあるなぁとか。二人の世界には、入る隙間がねぇやみたいな? うーん、仲間としてはちょっとジェラシー。」 冗談っぽく言うマサキだけど、僕はもっと恥ずかしくなって、顔を真っ赤にした。 (そんなの……っ) 「「僕(俺)達、幼馴染だから(さ)。」」 「ほらー。そうやって息ピッタリなところとかぁ。」 予想外に、大和とハモってしまい、益々恥ずかしくなった。 僕からしたら、マサキ達の方が仲が良いと思う。よくお互いに貶し合ったりしているけど、いくら冗談だとしても、本当に信頼し合ってないと出来ないことだと思うし。 そんなことを考えていたら、ダイキが急に喋り出した。 「お前等、学校に乗り込むぞ。」 [*前へ][次へ#] [戻る] |