silent child
23
――何これ? 何コレ?
もうわけがわからなった。
何で僕は、石川君の前で叫んだりなんか出来たの?
何で僕は、石川君の前で笑ったりなんか出来たの?
何で僕は、石川君の前で泣いてなんかいるの?
――分からない。
分からないんだけど、もう止まらない。
僕は壊れちゃったのかもしれない。
「ふぇーっ。ぅえーーっ。」
「お前って、マジウケるヤツ。今度は泣くのかよ?」
石川君が何か言ってるけど、もう知ったこっちゃない。僕は僕が分からなくて、必死なんだから。
「おいっ! ぴぃぴぃ泣いてんじゃねぇぞっ?!」
(もとはと言えば、お前のせいじゃんかっ!)
「うぇーーっ。え゛ーーっ。」
僕はもう止まらない。
なぜだか分からないけど、止められない。
「おいっ!! てめっ! 何で余計泣くんだよっ!! ダンマリ野郎っ、じゃなかった……、あぁっと……、ちっ……、ケンタ……。」
(今もしかして……、ケンタって言った?)
驚いて、一瞬涙が止まった。
ガチャッ
「遅くなって悪ぃー! 直ぐ準備するわー。」
「メンゴメンゴー! はかどってる?」
漸く大和とマサキがやって来て、明るい調子で入ってきた。
と思った瞬間――、大和が凄い形相して駆けてきた。今までに見たことのない大和の顔。僕はその恐い顔に凄く驚いて、何も動けなかった。
ガッ!!
気付いた時には――、石川君は大和に殴り飛ばされていた。
「てめぇっ! 憲太に何してんだよっ!!」
「何考えてんだよっ! 大輝っ!」
「ぃっ、てぇー。クソッ!」
僕は頭が回転しなくて、石川君が二人に囲まれ、問い詰められている様子をぼぅっと見ていた。
「お前っ! ふざけんなよっ!!」
「大輝、正気かよっ! ケンタを襲おうってかっ?!」
「ただの冗談だろぉがよっ!!」
「クソ野郎っ!!」
大和がまた石川君に掴みかかる。
そこまできて漸く、自分がヤバイ格好していることに気付いた。
急いで直して、3人に駆け寄る。
「ぶっ殺してやるっ!!」
「あぁ? 上等だっ!! やってみやがれってんだっ!!」
大和が腕を振り上げ、もう間に合わないって思った瞬間――、
「……っ、やめてーーっっ!!!」
僕の口からまた言葉が飛び出ていた。
「はっ?」
「えっ?」
大和とマサキは驚いて固まっていた。
「ちっ……。いい加減放せやっ!」
石川君がその隙に大和の腕を振り払う。
今度は僕が、二人に掴まれた。
「憲太っ? はっ? お前、何でっ?」
「ケンターー?! 何で?! 何で?!」
何でと聞かれても、僕には分からない。
僕が逆に聞きたいくらい。
この日を境に――、僕はバンドのメンバーの前という場面では、喋れるようになった。
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