silent child 4 だって――、知らなかったんだ。 僕の存在が、皆の中にちゃんとあったんだってこと。 意外に僕のこと、皆は見ていてくれたんだってこと。 (どうしようっ) 嬉しくて、堪らない。 顔だけじゃなくて……、目の奥も、喉も、胸も熱くなる。熱で溢れ返り、苦しくなって、下を向いた。 ちょっと遅くなってしまったけど……、僕の中でも漸く、クラスメイト38人全員が“仲間”になった。 こんなに僕のことを見ていてくれた皆に、ちっとも打ち解けようとしなかったこと、凄く反省した。 「高木っ! 俺のにもメッセージ書いてくれよな!」 「あっ! そうだな! 俺も俺もっ!」 「ずるいっ! 私だって書いて欲しいよ!」 「そんなん言ったら、私だって! ちゃんと書いてよね、高木っ!!」 下を向いて真っ赤になっていた僕は、あっという間に囲まれた。僕の顔は、益々赤くなっていく。 ペンを渡され、早くと急かされて、何を書いていいのか分からずに……、とりあえず感謝の5文字を書きまくった。 全部同じじゃん、とか言いながらも、皆は喜んでくれたようだったから、安心した。 そんなことをやっていたら、矢口先生がやってきた。 「お早う! 皆居るな? いよいよ卒業式だ。 そろそろ始まるから、廊下に並べ!」 (始まる……) ぞろぞろと廊下に出て行く皆に、僕も続く。 整列をした後、体育館へと向けて、行列は進行を始めた。 (もう直ぐ始まる……) 体育館の入り口に着けば、他の行列の後へと合体する。 そして、合図があるまで待機。 『卒業生、入場! 皆さん、拍手でお出迎え下さい。』 (始まった……) 聞こえるのは――、溢れる程の拍手の音。 『須藤琢磨。』 「はい!」 どうしよう。回ってくる。 『瀬古一真。』 「はい!」 僕の番が……、回ってくる。 練習では一回も出来なかった。 名前を呼ばれたら、「はい」と返事をして席を立ち上がり、壇上に上がって卒業証書を受け取る。唯、それだけなのに。 (大丈夫、出来るはずだ) だって――、ライブっていう人の沢山居る場所で、声を出せたことだってあるんだから。 だって――、ステージに上るのなんて、何回もやって慣れているんだから。 (大丈夫、出来る!) 口を薄っすらと開けて、浅い呼吸を繰り返す。顔に、一気に熱が集まっていく。喉も痛くなる程、熱い。 (言え!言うんだ!) 『高木憲太。』 「……っ。」 [*前へ][次へ#] [戻る] |