silent child 3 新しいクラス。新しいクラスメイト。新しい先生。 全てが新しいはずなのに……、やっぱり僕は新しい僕にはなれなかった。 出席番号順で並ぶと、大和とはいつも前後の席になる。 僕は、小学校中学年あたりから、大和と違うクラスになったことがない。 本当は、その理由だって知っていた。だけどそれに気付かない振りをして、僕はいつだって甘えてしまうんだ。 新しい先生。矢口先生も、僕の方を意味深な目で見て、顔と名前を確認しているようだった。 矢口先生は30歳くらいで、そこそこカッコ良く、頭髪服装に関しても甘いことで有名な、若者に見方をするような先生。僕には何だか近づき難い感じがした。 先生の説明が終わり、僕の大嫌いな自己紹介の時間が始まった。 どうしよう。回ってくる。 僕の番が……、回ってくる。 「次、高木憲太。」 一斉に視線が僕に集中する。 思わず堪えられなくて、下を向いた。僕の頭にグサグサと何かが刺さっていくような感じがした。 ――がんばれよ。 さっき貰ったばかりの言葉が頭に浮かぶ。 ――今年こそはがんばりたい。 さっき決意したばかりの言葉も浮かぶ。 なのに――、僕の頭はどんどん下がっていく。僕の顔はどんどん赤くなっていく。 頑張りたい……、ちゃんとそう思っている。でも……、声が出ないんだ。頑張りたいのに……、頑張れないんだ。 次第に周りはざわつき始める。と言っても、僕と同じクラスになったことが無い子だけ。 無駄話を始める子が出てきて、少しずつ僕から視線が外れていく。それにあわせて、僕の気も少しずつ軽くなっていく。ざわざわしている今なら、ぼそっと言ってお終いになるかもしれない。 (今だ。ぼそって言って終わりにしてしまえ。) そう思って口を開きかけた瞬間――、ぱんぱんと手を打つ音。 「ほらー。静かに。クラスメイトとして、仲間の成長を確りと見届けてやれ。」 矢口先生がそう言い放った。 再び僕にグサグサと視線が刺さる。一気に静まり返って物音一つしない。 僕の気はどんどん重くなって、頭も机にくっつきそうな程下がっていった。 (静かになんてして欲しくない!) (余計なことを言わないで!) この瞬間――、矢口先生のことが大嫌いになった。 「名前くらい言えるだろ?」 先生は僕の口から言わせたいみたいだけど、僕の唇は、接着剤でくっつけられてしまったかのように、全く動かない。 「ほら。少しは頑張れ。」 (これでも、僕なりに頑張ってる!) 同じ頑張れという言葉なのに、矢口先生に言われたら酷くムカついた。 「努力をしようとは思わないのか?」 (努力した結果がこれなんだ!) [*前へ][次へ#] [戻る] |