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silent child
15

 四六時中、一緒に居られなくたって、それでもちゃんと、隣に居られる時間はたっぷりある。
 変に焦ってしまったけれど……、いつまでもそういう時間があるってこと、それだけで十分幸せだと思う。

「そうだよね。結婚して、子供が出来たとしたって、実家に住むとしたら、やっぱりお隣さんだしね。」
 ある意味、常に、隣に居るわけだ。
 何だか嬉しくって、照れくさくって、勝手にトーンが上がって声が弾む。

「いや……、結婚とか、子どもとか……、そういうのは……、分からないけどな。」
 折角友情を確かめ合っているって言うのに、大和はもごもごと歯切れの悪い言い方をする。

「えー、何でー? どうせなら子どもも同い年にしてさ、やっぱり幼馴染にしたいよね。同性同士だったら親友で、異性だったら許婚とかさ。そうしたらさ……、僕と大和も家族になれちゃうんだよ? 凄くない?」

(そうしたら、死ぬまで一緒に居られるし)
 なんだかテンションが上がってきて、妄想はどんどん膨らんでいく。
 そんな未来は、きっと楽しいだろうなと思って、一人にやにやしていた。

「家族か……。それもいいかもな!」
 大和もにやにやし始めた。
 きっと大和も、僕みたいに妄想してるんだろうな。

「とにかく、僕の隣に居る時間をちゃんと作ってよね。おじい同士になっても、一緒に縁側でお茶飲むんだから!」
「はいはい。」

 そんな未来予想図をたてて、二人で盛り上がった。
 にやにやしながら自転車を漕ぐ僕達は、周りから見たら、気持ち悪かったかもしれない。
 それでも楽しいんだから、別にいいんだ。ちっとも気にならない。


 結局、将来なんて、やっぱりよく分からない。
 だけど――、これから、大和と一緒に馬鹿やったり、真面目に勉強したりしながら、探していきたいなと思う。


――とりあえずの目標は、新しい僕になること。

 高校に入って、離れる時間が増えても、大和と仲良しなのは変わらない。
 それにきっと、誰よりも、大和が一番に、僕のことを応援してくれるんだろうなって思う。



(そんな大和が……)
「だいすき。」



 デジャビュ。
 僕の声と同時に、遠くでクラクションの音が響いた。


「えっ? 何っ?」
 そう聞く大和の顔は――、真っ赤だった。

「ううん、何でもない。」
 そう答える僕の顔も――、多分、真っ赤。





第6話 --完--





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