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silent child
14

 大和は目を見開いて、僕を見る。
「憲太っ! それホント?!」
 言葉を返そうと思ったら、また声が出なくなっていた。
 冷静になった僕は、ここが店内だと気付いてしまったらしい。

 今度は大和に手をひかれ、走るはめになった。

 店外で話そうと思ったけど、それも落ち着かないってことになって……、結局、大和がレッスンをさぼって、そのまま一緒に帰りながら、ゆっくり話すことになった。

 いつもと同じ帰り道。
 背中には重たい相棒。隣には大和。
 今度こそは、気まずい雰囲気じゃない。
 ゆっくり、ゆっくり、ノロノロと自転車を漕ぐ僕達。


「僕、理数科にするっ!
 あっ! って言っても、合格出来たらだけど。実力で普通科になっちゃったら意味ないね。」
 理数科に落ち、普通科の合格点に達していれば普通科になる。どちらかに行くことしか考えていなかったから、今更そのことに気付いた。
 こんなに揉めて、漸く決意したのに、実力不足で普通科になっちゃったとしたら、かなり恥ずかしい。

「憲太なら大丈夫っ! 絶対に、合格だって!
 俺だって、普通科合格出来るように頑張る!そんでもって、いつかは絶対に、理数科に上がってやるんだっ!」
 それを聞いてまた気付いた。普通科の成績優秀者は、理数科に上がれるってことを。

 何だか今思えば……、随分下らないことでケンカしていたんだなって思う。
――大和と離れるって言ったって、ずっとじゃなかったんだ。


 だんまり大和の面影もなく、今はすっかりニコニコ大和に元通り。

 大和がだんまりになって初めて、だんまりされた相手がどんな気持ちになるのかってことを知った。
 わざとやってるわけじゃないけど……、僕も相手のことを考えなきゃいけないなって思った。
――どうしても喋れなかったとしても……、これからはなるべく、顔や体を動かして反応するようにしよう。


「それにしても、久しぶりの大喧嘩だったなぁ。」
 大和がしみじみとそう言ったのを聞いて、肝心の言葉を言っていないことに気付いて、慌てて口を開く。
「ごめんなさい。」
(大嫌いなんて言って……)

「まぁ、良かったんじゃん? ケンカしたおかげで、憲太も今まで以上に頑張る気になったんだし。正直、俺だって……、憲太と離れるの、寂しいしさぁ。」
 大和も寂しいと思っているのを知って、ちょっと嬉しかった。僕だけの一方通行じゃなかった。

「でも、こうやって一緒に居る時間が全部、無くなっちゃうわけじゃないんだよね。」

「そら、当たり前だろ。一生、仲が良いのは変わらないんだから。高校行ったって、大学行ったって、社会人になったって、隣に居る時間が多いのは変わらないさ。」
(そっか)
――大和の隣に居るのは、変わらないんだ。


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あきゅろす。
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