silent child 8 何も返せない僕。 とりあえず、ご飯を黙々と食べた。 ご飯を食べ終わり、「ごちそうさま」をして、席を立つ時、お母さんにこう言われた。 「受験は競争なんだから、仕方がないわ。 大和君の分も、憲太が頑張れば喜んでくれるわよ。」 (大和が居ないなんて、無理だよ……) 「うん……、頑張る。」 あんなに泣き喚いていたのに……、結局、僕には、理数科をやめたいなんて言えるわけもなかった。 ちっとも変わらない、理数科を受ける予定の僕のまま……、再び部屋に戻る。 ベッドに座って、今度は落ち着いて考える。 冷静になってみれば、やめるだなんて大和に宣言したって、僕には実際にやめることなんて出来ないってことに気付いた。 お母さんだけでなく、矢口先生にだって言うことは出来ないから……。それに、前回の三者面談で、進路は理数科で決定ってことになっちゃっている。 大和はCが維持出来れば理数科、無理だったら普通科ってことで話がついてたから、変えただけ……。 (どうしよう……) 大和と離れるなんて、嫌だ。 でも、理数科をやめるだなんて、大和以外には言えない。唯一、言えた大和にだって、猛反対されケンカ中。 どうしようなんて言ったって、どうもならないってことを、僕はちゃんと知っている。 それでも、大和と離れたくないんだ。離れるってことを、認めたくない。 普通科にしたって、絶対に大和と同じになれるなんて確証はないってことも、分かっているけど……。 それに――、将来のことなんて、全然考えていなかった。 行ける所に行って、大和と一緒に居られれば、それだけで良かった。 だけど……、大和の言ったように、将来の職業まで同じにするなんて、きっと無理な話。そしたら、やっぱり大学だって、同じ所には行けない。 (将来なんて、分からないよ……) でも、ちゃんと考えなきゃいけないってことも知っている。 マサキは、音楽の専門学校に行くって言ってた。音楽の勉強が出来て、ちゃんと高卒の資格も貰える所。 きっと、マサキの将来の夢は、音楽関係の仕事に就くこと。 ダイキは、この辺りで一番、偏差値の低い高校を受けるって言ってた。でも、偏差値が理由じゃなくて、軽音部が盛んだってことで選んだんだ。 きっと、ダイキの将来の夢は、バンドマン。 大和も、よく分からないとは言ってたけど、とりあえずは勉強したいって言ってた。選択の幅を狭めないようにって……。 (僕は……、どうしよう) 皆より、大分出遅れてしまったような気がする。 (カレンは、どうするんだろう?) まだ、カレンの進路を聞いていないことに気付いた。 参考になるかもと思って、カレンへとメールを打ってみる。 [*前へ][次へ#] [戻る] |