silent child 3 Eなんかじゃ、矢口先生が受けていいなんて言うはずないし……、普通科でさえ、合格率は50%。お金のかかる私学を避けるためには、本当だったら学校を変えて、安全牌を取るのが普通だ。 「普通科で出すよ。」 大和の声と同時に、遠くでクラクションの音が響いた。 それでも、僕の耳にはしっかりと答えが届いていた。 だけど、僕の頭は理解するのを拒んだようで……、思わず、聞こえなかった振りをしていた。 「え? 何?」 「俺、普通科受けるよ。」 聞き返したって、事実は変わるわけはない。 小さい頃から、ずっと一緒に居た大和。 僕には、離れるなんて考えられない。 大和の居ないクラスで、学校生活を送るなんて考えられない。 理数科だったら1クラス。絶対に一緒になれるはずだった。だけど、受けられないものは仕方がない。 普通科は……、クラスが沢山。 このまま僕が理数科を受けたら、大和と一緒になれる確率は、0%。 普通科に変えたら、確率は10数%。 それなら僕は――、迷わずに普通科を選ぶ。 「じゃぁ、僕も普通科にする。」 キィーーーーッ 大和が急ブレーキをかけて止まった。だから、僕も慌てて急ブレーキをかけて止まる。 (何……?) 意味が分からず、僕は大和へと振り返った。 「何で?」 大和の声はさっきまでとは変わっていた。ちょっと硬くなって、ちょっと低くなった声。機嫌が悪くなってきた証拠。 「何で怒ってるの?」 (喜んでくれるんじゃないの?) 大和の機嫌が悪くなったことが、不思議で堪らなかった。 僕が普通科に変えたら、一緒に居られる可能性が高くなるのに……。 「何で、普通科に一々変えんの? 理数科に十分入れる成績なのに、意味ねぇーじゃん。」 (何でって言われても……) 理由なんて、ただ大和と離れるのが嫌だから。 確率だなんだって言ったって……、今まで同じクラスにしてもらえていたように、普通科にしたとしても、先生達が考慮して、同じクラスにしてくれるんじゃないかって……、どこか甘えた気持ちもあった。 大和の顔から、笑みが引っ込んで、僕も何て言っていいか分からなくなる。 「今までのように、同じクラスにしてもらえるわけじゃないんだぜ? 今回は受験なんだからさ……。あの矢口先生が、調査書に、不利になるようなことを書くと思うか? そういう理由だったら……、変えるなんて言うなよ。」 (そんなこと言われたって……) ――この僕に……、大和と離れたまま、学校生活を送るなんてこと、出来るはずがないじゃんか! 「嫌だっ!! 普通科にするっ!!」 大和と離れることが恐くて、分かってくれない大和に腹が立って……、ムキになって、顔を真っ赤にして叫んだ。 [*前へ][次へ#] [戻る] |