silent child 2 「ヤマトも、それでイイ?」 「……あぁ。」 大和が漸く喋ったと思ったら、一言だけ。その声はやっぱり、硬くて低い……、怒った声だった。 「ってことで、暫く休止っ!! そんでもって、次のライブは合格が決まってからなっ!!」 マサキは明るい口調でそう宣言したんだけど……、寂しいっていう気持ちもないわけじゃなく……、皆の雰囲気もどこか少し暗いまま、最後の練習は終わった。 僕達、noisy boysは、こうして、一時的にバンド活動を休止することになった。 受験勉強に集中するために……。 そもそも大和とケンカになったのも、この受験が原因。 スタジオに向かう途中での出来事だった――。 いつもと同じように、自転車を漕ぐ僕達。 いつも通り、背中には重たい相棒。隣には大和。 どうでもいいような下らないお喋りをしながら、スタジオを目指す。 赤信号で止まった時、丁度話題が切れた。 長い付き合いの僕達は、別に、場の沈黙くらいで気まずくなったりなんかしない。むしろ、そんな空気を二人で感じて、まったりするのも好きだったりする。 自転車を漕いでいる時は気にならなかったけど、止まっていると余計に風が冷たく思えてくる。 (今日は、寒いな) ふうっと息を吐いてみれば、白かった。 「この間のさ……、模試、どうだった?」 ふいに大和が新しい話題を振ってきた。 大和の声には、ちょっと力がない。 その理由を、もちろん僕は知っている。 最近の僕達は、バンドのことばかりに頭がいっていて……、ちっとも勉強に集中できていなかった。 休み時間に勉強を始めた周りを見ても、何とも思わずに……、僕達はスコアなんか見て、アレンジとか考えていたくらい。 周りとの差が、いつの間にか出来ていたことを知ったのは……、模試の結果を見た時。 「ちょっと、下がったよ。理数科がAで、普通科がS。」 前回は、理数科もSだった。 どちらからとも無く、ため息を吐く。 「俺なんて、EとCだぜ?」 大和がそう言った瞬間、信号が青になった。 驚いた僕は、直ぐには動けなかった。大和との距離がどんどん離れていく。 (嘘……、E?そんな……) 前回の大和は、CとA。 僕はすっかり、大和と一緒に、理数科に行けるものだと思い込んでいた。 ――それじゃぁ、僕と大和は、別々のクラスになっちゃうってこと? 離れていく大和の背中を見て、不安が募っていく。 急いで僕も、大和の後を追いかけた。 「大和っ! それじゃぁ、願書はどうするの?」 どうするの、なんて聞かなくたって、そんなの本当は分かりきっている。 [*前へ][次へ#] [戻る] |