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silent child


第6話 『だんまり大和』

いつもだんまりの僕を助けてくれた大和。

だけど今は――大和がだんまり。

だんまりされるのが、こんなに嫌な気分になるって……全く知らなかった。






 いつものように、今日もスタジオで練習をする僕達。
 だけど――、雰囲気はあんまり良くない。

 今は1月中旬。
 中学3年生の僕達にとっては、何かと忙しい時期。そして――、苛立ちやストレスも溜まる時期。


「いい加減にしやがれよっ、テメェ!!何回も同じミスしやがってっ!!」
 だからなのか、ダイキが切れるタイミングも早くなってきた。

 ダイキの切れた顔を、ぼんやりとしたまま見つめる。
「このっ、ダンマリ野郎っ!!何とか言いやがれっ!!」
 そう言いながら、ダイキが掴みかかったのは僕、ではなく……、大和の方だった。

「……。」
 大和はダイキに詰め寄られても、何も答えない。どこか冷たく感じる無表情で、だんまりしたままの大和。
 その姿はまるで――、僕のようだった。
(大和……)

 大和がこうなったのは……、確実に僕のせい。
 僕達は、幼稚園以来の大喧嘩をしたんだ。
 いつもは怒ったって、会話くらいはしてくれる。なのに、今はこんな感じ。
 本気で怒った時の大和は、だんまりになるってことを、初めて知った。
 いつもヘラヘラしてる分、大和の真顔が恐く見える。

「ダイキ……。」
 僕に突っかかってくるダイキを、いつも宥めてくれる大和。僕には、大和に突っかかるダイキを宥めることさえ出来ない。
「まぁまぁ、落ち着けって! 今は、何かと忙しい時期だもんな。一応さ、受験とかあるわけだし?集中出来なかったり、イラつくのもしゃーないとは思うけど?」
「ちっ……。」
 マサキは流石、ダイキの扱いに慣れているだけあって、上手く二人を引き離してくれる。

「つーかさ、言おうと思ってたんだけど……、とりあえずバンド活動休止しねぇ?」
「えっ?」
「はぁ?」
 マサキの言葉に驚いた。
 ダイキも驚いたようで、凄い目つきでマサキを睨みつける。

「休止って言っても、一瞬だけどな。とりあえずは、受験が終わるまでってことで。」
「マジかよ?」
(休止……)
 何かとライブやりたがるマサキの口から、そんな言葉が出るだなんて思わなかった。

「俺等の受けるとこみたく、名前だけ書けば合格するようなガッコとは違うからなぁ、ケンタとヤマトのとこは……。俺等だってよ、流石に酷すぎたら落ちるかもしんねぇーしよ。
 今はとりあえず勉強に集中して、合格してから再開すればいいじゃん?な?」

 いつもおちゃらけているマサキだけど、実は一番よく、皆のこと考えているんだなって思う。こういう時の顔は、まるでリーダーの顔。バンマスとか、ちゃんと決めてないけど、多分マサキが一番向いている。

「ちっ……、そうだな。」
「……うん。」
 寂しいけど……、マサキの言っていることは正しい。ダイキも渋々承諾した。そして、僕も。


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