silent child 21 その後、沢山の歓声と拍手を貰ってステージを下りた。 次のバンドが、しんみりした雰囲気を吹き飛ばすような曲をやってくれたおかげで、また会場の雰囲気が戻った。それに続けて、最後のバンドも盛り上がったまま終わった。 これで今日のイベントも終わりかって時に、観客が一定のテンポで手を叩き始めた。 パン! パン! パン! パン! 「「「こーとのはー! こーとのはー!」」」 こんなことは予想外で、僕はビックリした。アンコールってことらしい。 「うっしっ!! もっかい行くぞぉーー!!」 「憲太っ、やったなっ!! 行くぞっ!!」 「ふっ……、行くぞ。」 テンションの上がった仲間に連れられて、僕はもう一度ステージに上がった。 ウオォーーーーッ!!! キャァーーーーッ!!! 今日一番の歓声を貰い、僕達はもう一度演奏した。オリジナル曲、『言の葉紡ぎ』を。 あのクリスマスイベント以来、僕は、ライブでも一言二言喋れるようになった。 仲間の前で、一気に喋れるようになったみたく、また喋れるようになるかもしれないって期待してたんだけど……、やっぱりそう上手くはいかなかった。 毎回場の雰囲気は変わるし、観客もライブハウスも変わる。同じ場面ってことは有り得ないから。 それでも――、たとえ一言だとしたって、喋れるようになったのは事実。素直に嬉しい。 僕が応援したカレンはって言うと――、前髪をばっさり切っていた。 あっという間に追い抜かされちゃった僕。悔しいけど、カレンが変われたことは、僕にとっても嬉しいこと。 告白した結果――、残念ながら振られちゃったらしい。 それでも「諦めないで絶対頑張るんだ」と意気込むカレンは逞しかった。 あんな純粋で“真っ白な女の子”を振るなんて……、その相手には、きっとまだ、カレンの良さが伝わっていないんだなって思う。 ――これからも、カレンのことを応援していきたいな。 いつも応援されてばかりいた僕。 だけど――、たまには“「がんばれ」を頑張る僕”っていうのも、いいかもしれない。 頑張るまでが大変でも、頑張った後は、凄く気持ちがいいってことを、僕は知っている。 これからも、そんな僕になれるように……。 ――がんばれ、僕。 [*前へ] [戻る] |