silent child
19
マサキの声が止む。
そして、僕達の3人の最後の音。
ジャーーーーン―――ン.
余韻を持たせて、きゅっと音を切れば――、無が返ってくる。でも、その無も一瞬。
ワァーーーーッ!!
パチパチパチパチ!
直ぐに観客の音で溢れかえった。
観客の音だけの世界。
これを味わうのも、気持ちがいい。
作詞をした始めは、凄く恥ずかしかった。僕以外の人に、どう思われるだろうって、凄く怖かった。
でも――、こんなに沢山の歓声と拍手をもらった。noisy boysの音に乗せたら……、こんなにもカッコ良くなった。
(頑張って……、良かった)
右手に持っていた“がんばれ”のピックを、掌にぎゅっと握りこむ。
ここからは……、もっと頑張りたいから。
『有難うございましたっ!!
俺等の持ち時間が終わるまで、あと少し。残りの時間を……、ケンタにあげたいと思う。
今まで喋れずに居たケンタだけど、ある子と約束したんだって。今日のライブで、その子のことを応援するって。
その子は、ライブを頑張ってって意味で言ったらしいんだけど……、ケンタはその子のために、頑張って伝えたいんだと思ったんだって言ってた。
本当の最後の曲は――、ケンタからの“応援の4文字”。どうか皆さんも、心の中で応援しながら、聞いて下さいっ!!』
僕がお願いしたことは――、応援の4文字を伝える時間をもらうこと。
マサキが言い切った後、こっちを向く。大和も、ダイキもこっちを向く。観客も、一斉に僕の方を向いた。
少しのざわつきの後、無が返ってきた。
今まで以上に緊張して、心臓がドクンドクンと暴れまわっていた。
ゆっくりとマサキの隣へと進む。
あの応援の4文字と共に、マイクを受け取った。
正面に振り返れば、沢山の人影が見えた。
沢山の視線が僕に突き刺さる。
(熱い……)
あっという間に、顔が真っ赤になったのが分かった。
(カレン……)
ゆっくりと、カレンへと視線を合わす。
暗くて、カレンの表情はよく分からない。
でも――、カレンが頑張ったってことだけは分かる。顎くらいしか見えなかった顔が、今では鼻あたりまで白く浮き上がって見えるから。
もっと、カレンが頑張れるように……、伝えたい。あの応援の4文字。
マイクを口元に持っていき、薄っすらと口を開く。会場に響いたのは……、ひゅーひゅーと息が漏れる息。
(言いたいのに……)
もう一度やってみても、響くのは息が漏れる音。右手にピックを握り締めたまま、左手にマイクを握り締めたまま、僕の体は固まった。
(伝えたいのに……)
――たったの4文字なのに、僕はどうして言えないの?
そんな自分がムカつく。悔しくて……、熱くなる。
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