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眠りの淵で

「ああ、だるい…」




きらきらと煌めく太陽が憎い。今すぐ消し去ってやりたいくらいに。

ベッドの中から窓の外を眺め、ブラッドはぼんやりと心の中で太陽へと罵詈雑言を吐いていた。

言葉を口にするのも億劫で、やる気というやる気が全て抜けていってしまっている。

元よりブラッドにそれ程やる気があるわけでもないのだが。




「…ブラッド」

「なんだ?」




腕の中から聞こえる不満そうな声に答え、憎き太陽から愛しい少女へと視線を移す。

不機嫌そうに顔を歪めた少女は太陽より陰気で陰鬱でいっそ清々しい程に鬱々として優しくて愛しい。
自然弛む頬をその侭に、抱き込んだ小さな体をより引き寄せる。




「ブラッド!」

「ん?」




制止を促す声は無視し、栗色の柔らかな髪にブラッドは顔を寄せた。

逃げるように身を捩る少女の体をがっちりと固定して、瞼を閉じる。

太陽の昇る時間はブラッドの睡眠欲を掻き立ててうつらうつらと去っていく。

思考は既に微睡みの中で、覚束ない。




「ちょっと!寝るのは私を離してからにして!」

「…嫌だ」




嫌だじゃないわよ!

抗議する少女に再度嫌だと呟いてまた瞼を閉じる。

が、がなりたてる少女の声がなかなか眠りへと行かせてくれない。




「…君は私の腕から抜け出て誰の所へ行くつもりだ」

「は」

「私は眠たい。眠たいから寝る。しかし、起きて君が隣にいないのは、嫌だ」

「…はぁ?」

「起きるまでここにいろ。それだけでいいんだ」




心の広い旦那を持てて、君はしあわせだな。

そう言って呆気に取られて何も言えないでいる少女を置いて眠りにつく。

少女への拘束は緩めずその侭。



眠りの淵、小さく少女の罵声が聞こえた気がした。










君を閉じ込めてしまえるなら太陽すら味方にしよう。









e.

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あきゅろす。
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