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針の檻

「嫌だよ、お姉さん」




ひくひく泣きじゃくる幼い少年。

その姿は血塗れで、片手には斧。

足下に転がるのは、




「僕を見てよ!」




体当たりするかの様に勢い良く抱きつく少年。

ガシャンッ、少年の持っていた斧が地面に落ちて派手な音を立てた。


嗚呼、彼は哀しんでいる。




「お姉さんお姉さんお姉さん…!」




ぐちゃぐちゃした思考の中、響く声。

沸き上がるのは何故どうしてなんでと疑問ばかり。




「お姉さんは僕を見てくれなきゃ、」




血の匂いが鼻につく。

これは一体誰の、血。

少年の腕に力が込もり、内臓が圧迫される。




「お姉さんを独り占めするのは僕なんだから!」




僕だけだよ、ねぇ、ねえ。




「兄弟はもういないんだ、お姉さん」




時計ごと貫いて滅茶苦茶にしたんだもの。




「……ぁ、」

「僕だけしか、」




ぽつり、ぽつり、ぽつ。

地面に落ちて染み込んでいく、それはこの世界であってはいけないもの。

ぽつぽつ。ぽつ。

禁忌の雨。




「僕だけ、だよ」




ざあああ、

降り出す雨。

流されていく赤。





「みんななくしてあげる」
「から」

「僕だけ、を、見て」





激しく地面を叩き付ける滴に少年の涙は隠され流され、連続する言葉にくらくらと目眩がした。

嗚呼、彼は哀しんでいる。




哀しんでいるのは、何故?















(足元に転がる抜け殻は少年と同じ形をしていて、)



















e.

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