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溺れる程の

「誰もが私より、姉や妹を好きになるのよ」




あなただってきっとそう。

そう言えば目の前の男は紅茶への意識はその侭にどうして、と問い掛けた。




「二人は必要とされているもの」

「私には必要ない」

「貴方は二人を知らないじゃない」




聡明な姉、無邪気な妹。

何にもなれない自分とは違う存在。

かちゃり、と紅茶のカップを置く音がした。

静かな音の筈なのに、やけに耳に響く。




「では、知らないから必要ない」

「…知ったら必要になるわ」

「私にだって選ぶ権利はある」




隣を見れば、ばちりと合う視線。

鈍く光るエメラルド。夜の闇の中、明るいライトが彼を淡く照らし出す。

夜のお茶会で見慣れた姿はいつになく真っ直ぐに自分を見ていた。




「私は、君がいい」




じくり、と。

真っ直ぐな瞳は彼らしくなくけれど心臓にねっとりと絡み付いて縛り付けられるそんな感覚を与えるそれはやはり結局彼らしい。

でも、と否定的に続ければ彼の視線に遮られた。




「君がいいと言っているんだ。他の奴がなんと言おうと私がこう言っている」




私は君の姉妹を好きになる気はない、利用価値があるのなら必要としないこともないが。

淡々と放たれる言葉は業務的で一切の感情は込められていなかった。

否、唯一在るとするならば。

アリスはじんわりと暖かくなる自分の心臓を感じて、唇を固く引き結んだ。




「今この場で君は劣等感を感じなくていい。寧ろ優越感に浸り込んでずっと私に愛されていろ」




エメラルドが緩く笑う。

頭に回された手のひらに引き寄せられても、アリスは抵抗しなかった。

軽く触れ合う唇に瞼を閉じて、今だけは。












甘く

甘く

貴方に溺れて
















e.

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