[携帯モード] [URL送信]
吐き出した

それがとても、痛かったの。




「寂しかった」




漏らした言葉はしっくりと馴染んでその空間に溶け込む。

後ろから抱き込まれる温もりに瞳を閉じて息を吐いた。




「妬ましくて劣等感ばっかり。なんで私が、て」




冷たい塊。胸の奥で固まっていたそれがゆっくり、と。

アリスは暗闇の中で吐き出していく。




「誰にも必要とされない事が、寂しかったの」




じんわりと伝わる温もりが気持ちよくて、アリスは瞼を上げずにそう吐いた。

暗闇でたゆたいながら、アリスはあの世界を想う。

けれど刹那ぐい、と。




「…今は、寂しくないだろう?」




甘く甘く甘く。

ぎゅう、と抱き締められ囁かれアリスはそれに酔いしれる。

想うあの世界にないもの、がこの世界にあることを。




「私が必要としているんだ、それで不十分な訳がない」




言い切る男は温かい。

ずっと、ずっと。温かい。

アリスはその男の胸に頭を預け、瞼を上げた。




「寂しいの、ねえ」

「なぜ」

「寂しくなるのよ」




男が前髪をやんわりと撫でる。

いつもは手袋をしているその手は白く、細い。

その指にそっと触れれば、やはり温かかった。




「貴方が、離れてしまうから」




その温もりが消えてしまう。




「私は消えない」

「そうね」




でも寂しいわ。

我が儘だと理解はしていても、アリスはその言葉を吐き出す。

男はけれどきっと、愉快そうに笑うのだろう。

でもね、でも。





「あいしているわ」





その温もりを与えてくれる貴方を。

アリスは触れていた指を握り、また瞼を閉じた。














寂しくて寂しくて

貴方がいないと

消えてしまいそう
















e.

[前へ][次へ]
[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!