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牧物
愛を知った日(ふたご村 ユリアリ)
*ふたご村 ユーリとアリエラ
*優しい牧場主の青年=キラなか男主
*アリエラはキラなか教会からふたご村教会に移ってきた設定
*楽しくないプロポーズ妄想120%



〜〜〜〜〜〜〜


『君が本当の愛を知る日は来るのかな?』

そう言って寂しそうに笑った、優しい牧場主の青年を思い出す。
愛ならばとっくの昔から知っていると意気込んだ私の言葉を、首を横に振りながら受け止めて。そうして彼は言ったのだ。

全てを包み込む愛ではなく、
平等に降り注ぐ愛でもなく。

切ないほどに真っ直ぐに。
ただ、一人だけを求める愛があるのだと。



女神さまに全てを注いでいたあの頃の私には、その意味が分からずにいた。否、分かろうともしていなかったのかもしれない。
村の少女たちが頬を染めながら微笑む理由も。
人々が自分だけの伴侶を見つけ、寄り添い生きていく意味も。
さようならと笑って遠く別れた、彼の本当の心の内も。


だけど。



「オレと共に生きてほしいんだ、アリエラ」


真っ直ぐに向けられた言葉と共に差し出されたのは、青い羽。柔らかな羽が夕風に揺れる度に、私の心も大きく揺らぐ。
この村に来る前の私ならば、きっとこの申し出にも何の躊躇いもなく首を横に振ることができたのだろう。女神さまと共に生きることが私の全てなのだと、はねつけられたのだろう。

そう、ユーリさんと出会う前の私ならば。


「わたし、は…」


先に続く言葉を紡ごうとした口が意識的に閉じられる。それ以上を告げてはならないと、心に低く響く警鐘が鳴っている。何も考えられなくて―――考えたくなくて、頭の中が一面真っ白になる。

ふたごの村の教会に移り住み、村の側に住む牧場主のユーリさんと出会い、彼と触れ合う内に、いつしか私の心には今まで知る由もなかった想いが芽生えていた。
それは甘くて、優しくて、あたたかくて。そして、狂おしいほどに切ない気持ち。

女神様に全てを捧げることを決めた私が抱いてはならなかった、禁忌の感情。



ふと、昔に出会った優しい牧場主の青年のことを思い出す。
彼は私に本当の愛を知る日が来るのだろうかと問うた。

言葉に込められた想いも、
寂しげな笑顔の理由も、
本当の愛の意味も。

あの頃の私には分からなかった全てのことが、今の私ならば分かるような、そんな気がした。


愛を知った日

(この胸の痛みこそが愛なのですね)

End





上手いこと色恋沙汰を避けてきたアリエラをふたご村男主がつかまえる話。
キラなかでは結婚できなかったのにふたご村で結婚できるようになって嬉しいよね!という気持ちを表現したらこんなことに…マルクごめん…

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