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牧物
プリーズハグミー(ふたご村 ディルサト)
*ふたご村 ディルサト
*友達以上、恋人未満ぐらい
*雰囲気で読むこと推奨



〜〜〜〜

「忘れてた」


そう言って、今しがた牧場を去ったはずの郵便屋の青年が駆け足で戻ってきた。先ほど届けてもらった手紙以外にも何か私宛のものがあったのだろうか。首を傾げながらも自宅に戻ろうとしていた足を止め、青年と青年が届け忘れていたものを待つ。

軽快に近付いてくる足音。
次第に2人の距離が縮まっていく。

あと3歩、

あと2歩。

あと1歩。

青年が踏みしめたのは配達物が何の問題もなく受け渡しできる位置。それなのに、青年の駆け足はまだ止まらない。



「ディルカ、」


近すぎるよ、という言葉は息と共に飲み込んでしまった。2人の距離はおおよそ0p。与えられた優しいぬくもりに思考が完全停止する。シャツ越しにディルカの心臓が跳ねる音が聴こえて、私の心音もつられて更に大きく跳ねた。



「よし、サト充電完了!」


悪戯が成功した子どものように、ディルカが笑う。あまりにも一瞬の出来事だったため、何が起こったのか整理できず考えることが追い付かない。ただ、抱き締められたときに感じた腕の力強さとか、鼻をくすぐるシャツの香りとか、そんな感覚的なことばかりがグルグル頭の中を回っている。

―――忘れてたのは私宛の何かではなく私だったのか。
なんて妙な結論をようやくまとめた頃には既にぬくもりは離れていて、じゃあなと手を振る彼の背中が再び遠ざかっていくところだった。だけどこの調子では、暫くはこの場から動けそうにない。一気に静かになった牧場と私。その中を吹き抜けた秋風が、火照りきった頬を優しく撫でた。



プリーズハグミー


(ディルカに充電された分の私は、彼の中でいったい何になるのだろう)

(例えば、私の笑顔の源がディルカであるように)

(出来るならば私も彼の笑顔の源であるならば嬉しい、と思う)

END





本当は新婚でいってきますのちゅー忘れた!って帰ってくるディルカを書く予定でした。でもあまりの甘さっぷりに挫折。
正直、瞬間ハグでも書いててお腹いっぱいになりました。もう君たち付き合っちゃいなよ!

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あきゅろす。
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