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牧物
見返りダーリン(双子村 キリサト)
*ふたご村 キリクとサト
*恋人または夫婦設定
*サトちゃんが妙に積極的



〜〜〜〜

「ねぇ、キリクくん」

「あぁ、サトか。ちょっと待ってくれ、いまハヤテのおやつを作っているところなんだ」


私の呼び掛けに返ってきたのは、声だけの空返事。馬屋に入ってきた私に気付いたものの、作業に夢中な彼は此方を見ようともしない。
せわしなく動いている手の様子が、向けられている背中から伝わってくる。一切振り返る気配がないところをみると、どうやら相当真剣にハヤテのおやつを作っているらしい。


「キリクくん」

「あぁ、うん。悪い、もう少しだけ…」


またもや声だけの返事。
戸口に背を向けたままのキリクくんは、決して気が付かないのだろう。私が、いまどんな顔をしているのかということを。そして、私と彼の距離がどれだけ縮まっているのかさえも。

一歩、また一歩と歩みを進め、大きな背中に近づいていく。
キリクくんはまだ気付かない。

好きなことに向かって一直線になれるのは、とても素敵なことだと思う。彼の場合はその真っ直ぐさと純粋さが魅力で、馬の話や世話をしているときの様子は凄く輝いて見える。そして私は、そんなキリクくんが素敵で、凄く好きだと思っている。

けれど最近の私といえば、とてもわがままだ。キリクくんのことが好きになればなるほど、背中だけじゃなくて優しい笑顔が見たいと思ってしまう。振り返って名前を呼んでほしいと願ってしまう。


「キリクくん」

「ん、サト…?」


真後ろに到着すると同時に、私の気配にようやく気付いたらしい彼の背中がゆっくりと動く。キリクくんが後ろを振り返る。その動作すらも待ちきれず、私の両手がいち早く彼の頬を包み込んだ。
手のひらから伝わるのは確かな動揺。そのことに満足しながら、そこから更に一気に距離を詰めて、そして――。


「ねぇ、もっと私を見て」


驚きに大きく見開かれた瞳に写るのは、他の何モノでもなく私一人だけ。いま、大好きな彼が見つめているのは、世界でたった一人だけ。
そのことがとても嬉しくて、幸せで。すっかり固まってしまったキリクくんの唇に、もう一度小さなキスを落とせば、今度は背中ではなく、茹で蛸のように真っ赤になった彼の顔と暫し対面することとなった。


見返りダーリン

(私を掴まえて、離さないでいて)

END




キリクは結婚後も馬一筋すぎて色々と大変そうな気がする。
たまには女の子から積極的なのもいいじゃない!
だがこの後すぐに体勢を立て直したキリクに反撃されるに違いない。
サトちゃん逃げて!超逃げて!!

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