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本気にすんな
連れて行かれた屋上にて、驚きの出会いがあった。
足を組み、下のコンクリートに背を預ける少年が目だけこちらによこす。

「先輩」
「それはどっちに対しての先輩?」
「誰があんたに付けるかあほ。千歳先輩の方や」

冷たい。
財前くんが冷たい。
ピアスはだめだろピアスは。
薄情にあしらわれても、光る耳元の影響で強気にブレーキがかかる。

「千歳くん。この子、ぶっ潰していいですか」
「逆に潰されるけんやめちょったがよかよ」
「はい」

結果、彼の説得力が私を勝った。

「は〜あ。見たことない組み合わせっスね」

絶対寝起きだと確信づかせる無気力なあくび。
女の私より色っぽいのは罪だ。

「白石から話は聞いたとよ。転校早々監督の目に留まったばいね」
「そ、そうだっけ」

財前くんに夢中な間に千歳くんはフェンス付近へ移動していた。
話が聞き取れる程度に近寄り、相槌を打つ。

「俺も四月転校したたい。関東から来たと?」
「へ、へへへ」

笑ってごまかす改め、照れてごまかす。
ちらりと視線を落としたら、七並べで一人遊びに燃える後輩の様。
トランプは、みんなでやるから楽しいのだ。
財前くんも顔に似合わず四天宝寺の空気を受け継いでいる。

「困ったこつあったら言うてくれてよかけんね」

下駄響かせ、笑顔向け、ただいま帰ります九州男児。
屋上に残されるものはトランプを片付ける音のみ。
私は彼に接近しながら歩を休めた。

「見た? かっこ良すぎるよあの人」
「見てへん」

早々と瞼が閉じられてしまった。
食事などは隣の財前家で世話になる身だけれど、財前くんは毒舌で嫌みも言ったりする。
てっきり私の素性をおもしろがってばらすと思っていた。

「トリップのこと、なんで喋らなかったのさ」

風が強く、めくれそうなスカートを押さえると。

「あんたの秘密、俺だけしか知らんっちゅーのが一番おもろいから」

扉前で立ち止まり、振り返らず言い放つ。
表情はご想像にお任せします……だと!?
じれったい仕打ちに耐えた矢先、心臓が一時停止一歩手前状態になった。

「本気にすんなやあほマネ」

得意げな悪顔のせいだ。
マネージャーと呼んでくれる喜びを味わい、まだまだ旅生活は続く。





To be continued.
20081128

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