なんなら家族、はじめませんか? 訣別-Red footprint- 走る。 月明かりと街灯だけが照らす真夜中。 がむしゃらに二人で。 走る、走る、走った。 苦しい息も熱い身体ももつれる足も。 けして楽しいものじゃなかったけれど。 繋いだ掌だけは、確かな現実。 道も途中から分からなくて、とにかく走り続けるために出来るだけ広い道に出る。 大通りに近ければ行き止まりにはならないだろうと信じて。 誰も信用出来ない。 大人は嘘吐きだから。 わからない。 嘘なのかそうじゃないのか。 だから。 だから逃げ出した。 ここの所何も食べていないせいで身体がふらふらする。走っているだけで僕にはすごいことだ。喉はカラカラだし肺はひゅーひゅー鳴り続けるし頭は走ってるせいでがんがん痛い。 でも、走らなきゃ。 "大人"から逃げるために。 僕の手をきつく握るお兄ちゃんだってここ数日何も食べていない。僕より身体の大きいお兄ちゃんの方が辛いはずなのに、ぐいぐい僕を引っ張ってくれる。 「歩夢っ…頑張れっあと少しだ…!」 「うん…っ…うんっ…!」 どれくらい走ったのかな。 裸足の足は悴んで感覚がない。足の裏がじんじんとしているからもしかしたら切ってしまったかもしれない。 それでも走るのは、"大人"に見つかったら今度こそどうなるかわからないから。 想像しただけでゾクリと腹の底が冷たくなる。嫌だ嫌だ嫌だ。あんな所、もういたくないよ。 景色なんて見ずに走っていたから、いきなり視界の先が明るくなったことに気付かなかった。なんだか騒がしいし、人気も多い気がする。 けれど身体はそんな事より限界を訴えている。歩きたい。止まりたい。座りたい。 ぐるぐる頭を巡る考えに気を取られ、僕は前をちゃんと見ていなくて。 「うっ…!!!」 「おあっ!?」 人にぶつかってしまった。反動でお兄ちゃんの手は離れてしまう。 「歩夢!!」 ぶつかった人には悪いけど僕は立ち上がる事も出来ず、朦朧とする意識の中でお兄ちゃんの僕を呼ぶ声を聞いていた。 [*前へ][次へ#] |