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ボンボンちょこれぇと
スキの日
拍手文。








いつもの空き教室で二人。
どこからか持ち込まれたソファーに並んで座っている俺と篠先輩の間には昼休みの穏やかな時間が流れる。
部屋にあった雑誌をぱらぱらと捲る篠先輩の横でペコちゃん飴の封を開けつつ、手元を覗き込む。

内容はありきたりだ。最新の流行から、ファッション、人気芸能人のゴシップネタなど様々な事柄を取り上げている。

「この俳優って今人気ですよね」

「へえ。そうなのか?」

「はい、TVで引っ張りだこですよ。篠先輩はあんまりTV見ませんか?」

ぶどう味の飴を舐めながら篠先輩を見上げる。ただ雑誌を眺める姿もイケメンなんだから、やっぱり篠先輩はすごい。


「ああ、外にいることが多いしな。あんま興味ねえ」

苦笑して頭をぽんぽんされた。子供にするような仕草になんだかなぁと思いながらもちょっぴり頬が熱い。いやほらやっぱり篠先輩イケメンだし。仕方ないじゃん?
雑誌に目線を戻し次のページを見れば、学校やニュースではお馴染みの今日は何の日?というタイトルがでかでかと書かれていた。

「へぇー。今日はキスの日なのかぁ」

雑誌を読み進めると、どうやら日本で初めてキスシーンが登場する映画が公開された日らしい。普段、日にちを気にかけたりしないけれど、こうやって色んな知識を知ると自分がほんの少し博識になったみたいで楽しい。

「えーと、キスに関連したアニメにはグリム童話、白雪姫がある、か。白雪姫なんて懐かしいですね」


つい浮かれて記事を読んでいたけど、さっきから篠先輩の返答がないことに気付く。どうしたんだろう、と顔を上げれば不意に目の前が真っ暗になる。え、と思う間もなく唇に柔らかい感触がして、ふわっと篠先輩の香水が香った。触れ合った時間はほんの数秒で、離れていった篠先輩をただ見つめる。

「あ…の、篠、せんぱ」

「…星」

「!…っん」

何か言おうとする俺の名前を呼んで、もう一度唇が触れる。あったかくて弾力のある自分より大きな唇が吸い付き、リップ音を響かせる。されるがままじっと固まっているけれど、頭の中はパンク寸前だ。
うわああぁあぁキスしてるんだけどおぉぉ俺ぇぇえ!!いきなりなに!?なんなの篠先輩っ!?
そんな雰囲気じゃなかったよねっ?えっ?俺の勘違い!?そうなのか!?あぁもういろいろ無理ぃぃぃ…!!

脳内で叫びまくっている俺に気付いてくれたのか、何度かバードキスを繰り返して篠先輩は離れていった。顔を真っ赤にして固まったままの俺に篠先輩はくすり、笑う。

「…キスしても、逃げないんだな?」

「っ!?!!」

「んな可愛い顔見せんなって。ここで襲われてぇの?」

「っし、篠先輩っっ!!!!」

にやにやする篠先輩は俺が知ってる先輩じゃない顔で笑う。フェロモンがだだ漏れで、普段のイケメンぶりに拍車をかけてとにかく格好良すぎる。そんな篠先輩にからかわれて俺が平静でいられる訳もない。さっきまで辛うじて手に持っていたペコちゃん飴も落として、赤い顔を更に赤くして叫ぶ。それ位しか俺には出来ないっての!もうやだ!

「悪い悪い。怒んなよ、星」

そんな俺にあっけらかんと笑い、胸元に抱き寄せる篠先輩は嬉しそうで、もう何を言っても墓穴を掘りそうな予感に、俺は肩口に顔を埋めた。今も、身体の中で暴れまわる心臓の意味は多分、わかってはいるような気がする。けれど俺は肺を満たす篠先輩の香りにくらくらしてしまって、それ以上考えるのを止めてしまう。

だって、篠先輩が悪い。

「なあ、星」

耳元でする声に意識を傾ける。それが爆弾とも知らずに。

「好きだぜ?」

「!!!」


やっぱり、俺は悪くないと思う。












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