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『ERROR』二章 7ページ
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「あ、あいつ……!取り戻した聖剣を持って……!?」

「また盗み出すつもりなのか!」

「遺跡の件も、やはり奴は黒か……!」


 シャルが聖剣を構えると、途端に男達がざわめきだした。
 そんな彼らを、後方からレイアスが煽った。


「ほらほら、凶悪犯が聖剣を持ち逃げするよ!君達、なんとしてもシャルくんを捕まえるんだ!それが君達の使命だ!」


 レイアスの言葉に男達はハッとし、各々の武器を構えた。
 シャルもまた、気を引き締めた。相手は100人。こちらは2人だが、こんな所でまた捕まっているわけにはいかないのだ。


 武器を構えた男達が、一斉に襲いかかってきた。
 一番先頭を走ってきた剣士が、シャルに勢いよく切りかかる。その攻撃を、シャルは持っていた鞘に収まったままの聖剣で防いだ。
 錆びた剣だから折れないかと危惧したシャルだが、それは杞憂に終わった。聖剣と呼ばれるだけあって頑丈だったようだ。


「……お前なんかよりも、先生やアレックスの方がよっぽど強いな。悪いけど寝ていてくれ」


 そう言うとシャルは、剣士の鳩尾に、拳を叩き込んだ。


「────!!」


 その瞬間剣士の体が、勢いよく吹っ飛んでいく。

 剣士は、周りにいた10数人を巻き込みながら10数メートル吹っ飛んだ末に、地下水路に流れていた水の中に落ちていった。


「……やべ、ちょっとやりすぎた」


 シャルは、ブクブクと泡を吹きながら水面に浮かんできた剣士の男を見て、内心申し訳なく思った。

 ……軽く気絶させる程度の予定だった。だが、加減がよくわからなかったシャルのパンチは、シャルが思っていた以上に力が強かったようだ。

 ちなみに鳩尾パンチで相手を気絶させるという知識は、昔アレックスと一緒に読んだ漫画で得たものだ。実際に剣士は気絶したわけだから、結果的には成功だと言えよう。
 ともあれ、シャルは一発のパンチで10数人を一気に一掃したのであった。


「……くそっ、いい気になるな!こっちにはまだ大勢いるんだ!負けるはずがない!

 “ファイアボール”!」


 魔術師の男が杖から放った火の玉が、真っ直ぐにシャルに向かって飛んできた。


「マジュツか……だけどこんな火の玉攻撃、大した事ない!」


 シャルは聖剣を振り回し、飛んできた火の玉に聖剣を消した。

 ……が、火の玉を追うように走ってきた男が2人、それぞれが槍と剣を構えながら、襲いかかってきた。
 槍と剣が、交差するようにシャルに襲いかかってきた。シャルは、それをバックステップでかわした。

 大振りで攻撃してきたが故に、2人には隙ができている。シャルは、それを見逃さなかった。
 シャルは、聖剣の柄の部分で、右から来ていた槍士の頭を横殴りした。槍士は、同じく大きく隙ができていた剣士(2)を巻き込み、十数メートル飛んでいった。

 ふと、シャルの頭の中に、かつてハウェルに教えられた事が過ぎった。


 ───“攻撃をした後が一番隙ができる瞬間なのだ”か……こういう事だな先生!


 シャルは、ここでまた1つ学習したようだ。やはり、実戦を積むに限る。


「やるじゃない、シャル!」


 エアリーが、エアリーに向かって巨大な斧を振りかぶる男を文字通り一蹴しながら感心したように言った。


「くそっ、こいつら……!」

「ひっとらえて目に物を見せてやる!」


 男達は、それぞれの武器を構えて、シャルとエアリーに襲いかかってきた。


「知性のない攻撃ね。まるで獣だわ。

“ララバイ”!」


 エアリーが魔法を発動すると、2人に襲いかかってきていた20人余りの男達が一斉にその場に倒れた。

 レムがかつて使ったのと同じ、催眠魔法だった。


「大人しく夢でも見ていなさい」


 倒れた男達に、エアリーが言い放った。
 シャルにやられた10数名やエアリーに眠らされた20数名を見て、シャルとエアリーに今に襲い掛かろうとしていた男達が、グッと足を踏みとどまらせた。


「こ、こいつら……!あれだけの人数を一気に……!」

「化け物かこいつら……!」


 男達の顔を青ざめる。ほんの1分も経たない内に、既に何十人も戦闘不能になっている。

 シャルとエアリーにやられた男達は、そう弱い男ではなかった。最初にシャルに斬りかかった剣士は、近々教団の一部隊の隊長を任せられるだろうと噂されていた男だった。

 ……次にかかって行ったら、今度は自分達があのようになるのだろうか。
 その考えが拭えず、男達の足がすくむ。

 そんな男達に、安全な位置でただ見ていたレイアスが不満げに言った。


「何だ、どうしたんだい君達。それでも君達は俺がちょっと誇る100人隊かい?使い捨ての名無しキャラとしてのモブ魂をここで見せつけないで、一体いつ見せつけられるっていうんだ。しっかりしてくれよ」

「ぐ……で、でもレイアスさん!」

「でもも何も無いだろう。100人掛かりでたったの2人相手に、なんて醜態だい?こっちにはまだ60人いるじゃないか、へこたれてないで行きな」

「くっ……!!」


 レイアスが強い口調で言う。
 ……だが、それでも男達は渋る。


「仕方ないね……なら、こういうのはどうだい?五星子のエアリーちゃんを見てごらん。エアリーちゃんほどの美人には、二度とお目にかかれないと言っても過言じゃない。

 2人をひっ捕らえたら、エアリーちゃんは俺達の監視下だ。そうしたら、レムの目を盗んでエアリーちゃんを寄ってたかって好きにできるよ。俺が目を瞑ってあげる」


 レイアスが、男達にとんでもない爆薬を投下した。

 すると、つい先程まで渋っていた男達の目つきが、途端に変わった。
 ヘタレた男達の面影はどこへやら、まるで獣のごとくギラギラした目でシャルとエアリーを睨んだ。


「そうだ!こっちにはまだ60人以上残ってる!!」

「俺達が負けるはずがない!!」


 俄然やる気になった男達が、最初よりも素早い動きで襲い掛かってきた。

 フェニエス教団では、婚前交渉を良しとしないレムが、不純異性交遊を厳しく取り締まっていた。故に、大方の者が男女交際を経験するくらいの年齢を過ぎても、女性経験がない者も少なくなかった。
(レムの目を盗んで交際していた者もいなかったわけではないが、レムにバレて大目玉をくらい、聖堂でかなり長い時間懺悔をさせられたそうだ)

 故に、男達は飢えていたのだ。そんな男達の前に現れた、絶世の美女という名の格好の餌を逃す手はない。


 ……しかし、エアリーはそんな男達の事情など知らなかった。否、知っていても到底受け入れられはしない。


「ふっざけんじゃないわよこのケダモノ共ぉぉぉぉ────!!!」


 エアリーの怒りの叫びが、地下水路に響いた。
 男達の欲望とエアリーの貞操が懸かった醜い戦いが始まった。









コメント:
最初は、このように下ネタを挟んで争わせる予定だった。エアリーの美少女さをここで表したかったらしい。
が、ここでのボスキャラはレイアスなので、レイアスの怖さの方を優先してアップしたかった。

レムの「婚前交渉を良しとしない」という設定は多分生きてます。生きているという方向でお考えいただけると幸いです。

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あきゅろす。
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