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122.戻るべき場所 ***


「はい。本物の骸さんの腕で抱き締めて下さい」



そんな私に、骸さんは一瞬だけ驚いた顔して。
でも直ぐにその表情は苦笑へと変わって行った。



「全く貴女には適いませんね。これも惚れた弱み…と言う奴でしょうか」



やれやれ…と少し呆れた顔で。でも何処か嬉しそうにそう囁いた骸さんは、私の頬から右手を離すと再び白蘭と対峙する。



「此処は僕が足止めして置きます。さあ、大空のアルコバレーノを並盛町に連れて行くのです」

「…でも、骸様…っ」



それまで事の成り行きを見守っていたクロームさんが悲痛な声を上げた。

そんな彼女を隣で心配そうに見つめる沢田さん。
彼は「骸!」と呼びかけ、揺れる瞳でこう問う。



「また会えるのか?」

「当然です。僕以外の人間に名前は疎か、世界を取られるのは面白くありませんからね。クフフ」



後ろ髪引かれる思いは勿論あった。けれど、それ以上に、私は骸さんの事を信じているから…。

私はクロームさんの傍に駆け寄ると、彼女の手を握り締め、小さく頷く。

骸さんなら大丈夫。そんな思いを込めながら…。

そんな私達を穏やかな眼差しで眺めた後、骸さんは、沢田さんに向けてあるメッセージを伝える。



「良いですか沢田綱吉。名前を守りたいと思うのなら、絶対に大空のアルコバレーノ・ユニを、白蘭に渡しては行けない」

「黙って」



刹那、蓮の花の拘束を破った白蘭の左手が骸さんの胸部を貫(つらぬ)く。
「ぐっ」と押し殺した声が、私の耳にも届いた。



「…いや…っ」

「骸さあぁあん!!!」



瞬時に顔を青ざめさせる、私とクロームさん。



「……さあ早く、転送システムに……炎を…」



そう言って私達を急かした骸さんの身体が、霧の炎と化して薄れ始める。
それを見た沢田さんは、急いで全員を促した。



「わ、分かった!クローム!みんな!」



彼の掛け声に合わせて、全員のリングに一斉に炎が灯される。様々な色の炎達は、一筋の光りとなって上空へと舞い上がり、頭上を漂う転送システムへと注ぎ込まれた。

瞬間、凄まじい光りが辺りを包み込み、気付いた時には、誰一人欠ける事なく、私達は並盛町へと帰還していたのだった。



戻るべき場所


(ただいま、並盛)


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あきゅろす。
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