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113.桔梗強襲


物凄い速さでこちらに向かって来る桔梗を目にし、入江さんは即座に山本さんに指示を出した。



「やはりターゲットの攻撃を開始してくれ!直ぐに綱吉君も向かわせる」

『OK!!』



そう言って山本さんが動き出した直後、こちらの囮(デコイ)が再び破壊される。残る囮は後3つ。



「正一、桔梗と此処との距離が2qを切った!!」



桔梗はもう目前だった。スパナさんと同様、私も、モニターを凝視する入江さんを見つめる。すると、入江さんが動いた。



「…獄寺君、聞こえるかい?桔梗が防衛ラインを越え、攻めてくるぞ!!」

『――嗚呼…。微かに爆発が見えてる』

「相手より先にターゲットを倒しさえすれば良いんだ!山本君達がターゲットを仕留めるまで、足止めしてくれ!!!!」

『んな事てめーにとやかく言われなくても分かってる!そこには名前も居るんだ。奴は此処から一歩も通さず必ず…倒す』



獄寺さんの気迫が無線越しからでも伝わってくる。どうか無茶はしないで…。寸前まで出掛かった言葉を私は飲み込む。
だってそれは今の私が掛ける言葉ではないもの。

無茶を承知しているのは獄寺さんだけじゃない。今、このフィールドで戦っている全員が同じ。
だから私は胸の前で両手を握り締め、祈るようにそっと瞳を閉じた。

けれど私の心配を余所に、獄寺さんの戦いはあっという間に幕を閉じる。
敵が戦う事なく、その場を通過したと言うのだ。



『くそぉっ、抜かれた!すまねー入江、名前』



悔しがる獄寺さんだが、桔梗の判断は正しい。
これはチョイス。ターゲットを倒すゲームだ。
幾ら敵の数を減らしても、勝利となるターゲットを倒さなければ何の意味もなさないのだから。

しかし、唯一の守備である獄寺さんが突破されて大丈夫なのだろうか?
不安を抱く私を余所に、入江さんは余裕の表情。



「了解だ。でもきっと大丈夫。丁度今、綱吉君のナビが治った所だから」

「ほ、本当ですか?」

「ええ。これで綱吉君と山本君…二人でターゲットを攻めらますから、桔梗が此処に来るまでにターゲットを倒せますよ」



入江さんの言葉に、ホッと胸を撫でおろす私。けれどその安堵はほんの束の間に過ぎなかったの。





『――違…う…』





無線機から響いて来たのは……沢田さんの声。


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