今彼は「違う」とそう口にしなかっただろうか。
私は事の真意を確かめる為に疑問を投げつける。
「沢田さん今、何と…」
『……ナビが壊れているんじゃない』
「な、何だって…!?どう言う事だい、綱吉君っ」
刹那、新たな警報音がユニット内に響き渡り、スパナさんが声を上げる。
「正一、歌姫!ボンゴレの周辺1.5qの範囲に異常な炎反応が…っ」
急いでスパナさんの傍に走り寄りモニターを覗き込むと、沢田さんの周りを渦を巻いた歪みようなものが取り囲んでいて。
「こ、れは一体…」
『――トリカブトだ』
ポツリと呟かれた名前に私はハッと目を見開く。
『まだ奴を倒せてなかったんだ。恐らくオレは今――、トリカブトの“幻覚空間の中”にいる』
「そ、んな…」
だって、だってそれじゃあ沢田さんと山本さんでターゲットを撃墜するというこちらの作戦が!
そうこうする内、山本さんが敵ターゲットの元に辿り着いた。だがそこでも新たな問題が発生する。何と、標的を目前にしてバリアに阻まれ、足止めされてしまったのだ。
「やはり一筋縄ではいかないか。だが、桔梗より先に山本君が敵ターゲットに到着したんだ。きっと先に倒してくれるさ」
その時、再びけたたましいブザー音が鳴り響く。
「桔梗接近!距離600!!」
「スパナ、迎撃用のレーザートラップはどれだけ取り付けられてる?」
「83%取り付け完了!!」
モニター画面に桔梗の姿が映り込んだ。入江さん達の間に緊張が走る。
「レーザートラップシステム、目標を捕捉!」
「よし!!レーザー発射」
入江さんの合図と同時に、桔梗に向かって一斉にレーザーが発射された。
「命中!出力98%」
私は両手を組み、上手くいってと強く願った。
ドドーン!!
だがその願いは、凄まじい爆発音と共に一瞬にして打ち砕かれてしまう。
「迎撃用レーザートラップ……――全、滅」
「そんなっ」
「来るぞ!!少しでも時間を稼ぐんだ!基地も走行モードに。スパナ、キャタピラを出してくれ!!」
「分かった!」
「名前さんはそのままじゃ危険だ。僕の隣のシートに座って下さい!」
「は、はい!!」
言われるまま、私は急いで入江さんの隣の、空いた席へと腰かけた。
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