直後、間近で凄まじい爆発音が響いた…のだけれど全く痛みを感じない。
不思議に思い、顔を上げると目の前には…。
「雲雀さん!!」
見慣れた後ろ姿があった。どうやら幻覚を削っていた球針態を盾にして皆を守ってくれたらしい。
「読めたぞ。リングの炎をレーダーの代わりにしているのだな。……リングから雲の炎を薄く広範囲に放射し、反射による炎の揺らぎで目に見えぬ幻海牛(スペットロ・ヌディブランキ)の位置を把握しているのだ」
「そんな事どうでも良いよ。それよりどうして彼女まで狙うんだい?君は歌姫が欲しいんでしょ」
「喉から手が出る程な。故に、死なぬ程度のダメージを与え、無抵抗の状態にすれば白蘭様の元へ連れて行くのもそれだけ早くなると言うものだ」
「『歌姫は無傷で確保』確かそう聞いたけど?」
「貴様のような番犬がついているのだ。多少の傷は致し方あるまい」
「成る程ね」
パリン。また雲雀さんのリングが砕ける。これで一体何度目だろう。このままでは雲雀さんのリングが底を尽きてしまう。
「…雲雀さん…」
私は山本さんの頭を膝の上に乗せたまま、傍ら立つ雲雀さんを見上げた。
当の雲雀さんは砕けたリングを見つめつつ、何かを思案しているようだった。その後、こちら振り返り、視線を合わせるように私の前に膝をつく。
「(本当は一瞬たりとも君の傍を離れたくないんだけど……仕方ない)」
「雲、雀さん?」
「…良いかい名前。何があっても“あの力”だけは使わないようにね。…君が“あの力”を使う事を、この時代の人間は酷く嫌がるから…」
まるで幼子に言い聞かせるように、穏やかな声色で語り掛ける雲雀さん。
そして私の頬に右手を添えると、ふっと優しい微笑みを向けてくれた。
「だからもし君自身で対処できない事があったら…僕を呼べば良い。必ず君を助けてあげるから」
どうして急にこんな事を言うのだろう。まるで雲雀さんが何処かにいってしまうような、そんな言い方…。途端に不安が込み上げて、私は自身の頬に触れる彼の右手に、そっと自分の手を添えた。
「…雲、雀さん…」
今にも泣き出してしまいそうな弱々しい声。自分でも情けないと思う。情けないと思うけど、どうしようもなく不安で不安で堪らないのだ。
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