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68.揺れる 想い **


獄寺さんも、ビアンキさんもずっとピリピリしてる。新しい修行が始まってからずっとだ。恐らく、以前この時代の獄寺さんに聞いた“二人の母親が違う”と言う事が関係しているのだと思う。先程リボーンさんが言っていた『例の件』と言うのもその事だと思うから。

…でも、それは私を避ける理由にはならない。やはり、本人に直接訊いてみるしかないようだ。




◇ ◇ ◇


「獄寺さん!」



キッチンから此処まで獄寺さんの後を必死に追い掛けた。けれど…どんなに名前を呼んでも、叫んでも……。彼は一向に止まってはくれない。



「待って下さい!!獄寺さぁんっっ」

「……、」



それでも必死に呼び続けていると、獄寺さんがピタリと動きを止める。



「……何だよ…」



不機嫌そうにこちらを振り返る獄寺さん。口を利いてくれた事に安堵し、乱れた息を整えながら顔を上げた刹那――獄寺さんと視線が合う。けれどそれはほんの一瞬。直ぐに逸らされてしまった。



(やはり避けられてる)



今まで感じていた疑問が確信へと変わった瞬間だった。ズキズキズキ。胸が痛む。苦しい。私は一体何をした?覚えがない。全く覚えがなかった。



「用がねーならさっさと戻れ。…疲れてんだ」



獄寺さんは踵(きびす)を返して再び歩き出そうとする。このまま行かせてはいけない。そう思った私は咄嗟に彼の手を掴んだ。その瞬間、獄寺さんの身体がビクリと揺れ、



「触んな!!!」



凄まじい怒鳴り声と同時に掴んだ右手を振り解かれた。完全に拒絶された。余りのショックに呆然と立ち尽くす私…。

そんな私を見た獄寺さんが、一瞬何かを口にし掛けたが、彼はその言葉を寸前で飲み込むと、苛立たしそうに舌打ちを打ち、何も言わずに私の前から立ち去って行く。

次第に小さくなる彼の背中…。私は涙を堪えながら、その姿をただ見送る事しか出来なかった。










≪獄寺side≫


部屋に戻り、自分のベッドにダイブする。仰向けに寝転がり、右腕で顔を覆った瞬間……頭に浮かんだのは今にも泣き出しそうな名前の顔だった。



「……クソ…」



あんな顔をさせたかった訳じゃない。ただ…彼女に掴まれた腕が熱くて…、どうすれば良いのか分からなかったのだ。



『……何時までそうやっているつもり、隼人』

「!!」



扉を隔てた壁の向こうから、突然聞き覚えのある声が響いて、獄寺はガバリと起き上がる。



「てめーっ、何しに来やがった!?」



声の主は獄寺の姉…ビアンキ…。彼女は廊下の壁に凭れたまま、部屋の中の獄寺に語りかける。


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あきゅろす。
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