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27.嵐の訪れ


名前はペタリと床に座り込んだまま、目の前でトンファーを振り上げる男を見つめ続けた。

周りには傷だらけで倒れる仲間達。そんな彼らを傷つけたのも彼女にとっては大切な人…。


どうして―……?



「…死になよ、歌姫」



どうして……、










“雲雀さん”。















ドォォォォォン!!


雲雀の構えたトンファーが名前に向かって振り下ろされる瞬間だった。

けたたましい爆発音が鳴り響いて辺りに煙が立ち込める。その隙に名前を引き寄せ、庇うように抱き締めたのは…、



「…てめー、一体何のつもりだ………雲雀」



一足遅れで屋敷の中に入って来た獄寺だった。
獄寺は腕の中の名前を強く抱き締める。間一髪の所で間に合ったが、名前は気を失い、ぐったりとしていた。



「ワオ、まだ動ける奴が居たんだね…」

「……雲雀…っ」



突然の乱入者にも雲雀は顔色一つ変える事なく、再びトンファーを構え直す。対する獄寺は困惑を隠せない。

雲雀は普段から仲間意識のある奴ではなかった。平気でトンファーを向けるし、何度戦闘になり掛けた事か分からない。


けれど―…。


獄寺は傷だらけで倒れる山本達に視線を移す。此処まで容赦なく牙を向けた事は今までなかった。

しかも何より許せないのは、その牙を名前にまで向けようとした事だ。



「…雲雀。テメェ、自分が何をしようとしたのか分かってんのかっ」

「何って、僕は“彼女”の望み通り歌姫を始末しようとしただけだよ」



獄寺は眉を顰める。明らかに自分の知っている雲雀恭弥ではない。彼は名前の事を『歌姫』と呼ばないし、誰かの命に従う程従順な男でもない。それに雲雀の口にした彼女とは一体誰だ?



(こいつは俺達の知ってる雲雀じゃねぇのか?奴の姿をした…別人?)



否、そんな筈はない。獄寺は直ぐにその考えを振り払う。この腹立たしい物言いと良い、使用する武器と良い『雲雀恭弥』以外の何者でもない。



「そこの君、無駄話はこれ位にして早く始めよう。歌姫共々ぐちゃぐちゃに咬み裂いてあげるよ」

「…くそ…っ」


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