小説
夏祭り#
「エースっ!!たこ焼き屋見つけたぞ!!!」
数歩先には満面の笑顔でこっちを振り向くルフィ
周りには夜8時をまわっても明かりが煌々とついている様々な屋台の列
─ルフィとエースは、夜のお祭りに来ていた
「わかったからちょっと落ち着けって…」
すでに右手には焼きそば、左手にはいか焼き、おまけに左腕にはお好み焼きが入った袋が掛かっている。
それらをまったく気にせずに、ルフィはたこ焼き屋の前で目を輝かせてエースを待っていた。
「ルフィ、一旦どっかで手に持ってるもの全部食べてからたこ焼き買わねぇか?」
「なんで?どうせ食うんなら今買っときゃいいじゃねぇか!」
いや、お前一旦落ち着け。
エースも祭りとくれば周りを気にせず騒ぐのが常だったが、以前子供のときに兄弟で騒ぎすぎてマキノに激しく怒られて以来、ルフィの「保護者」として参加するようになった。
まあ、エースのルフィに対する想いが段々と過保護になってきたせいでもあるが…。
「バカ、焼きそば冷めちまうぞ」
「あ」
なんとかルフィを引っ張ってベンチに座らせる。
(あの調子だと財布の中身なくなっちまうからな…)
やれやれとルフィの隣に座るエースをよそに、ルフィはがつがつと焼きそばを食べ始める。
美味しそうに食べてる弟をじっと眺めてたら視線に気づいたのか、ふと顔をあげた。
「エースも早く食えよ!美味いぞ!!」
「お、んじゃ俺も食うとするかな」
食ってるときのルフィの顔ってなんか可愛いよなーとか考えながら自分も袋に入ってた焼きそばを取り出す。
「ルフィ、お前口の横にソースついてんぞ」
いつの間にか焼きそばが終わりお好み焼きを食べている、ルフィの口の横についてるソースを指で拭ってやる。
「ししし!サンキュっ!」
にかっと笑うルフィを見て、やっぱりこいつは放っておけねぇな、と改めて思う。
「お前はほんとに俺がいなきゃだめだなー」
冗談混じりにルフィに言ってやると、またにかっと笑って
「そうか?あー、でも、そうかもな!エースがいねぇとなんか不安になる」
そのまま何事もなかったかのようにお好み焼きを頬張るルフィの髪をくしゃっと撫でてやる。
無邪気に言ったルフィがあまりにも可愛くて、何か言葉にするよりも先に触れてみせる。
「世話焼かせるもんなぁ、お前」笑ってルフィに返す。
ルフィが不安がるなら、ずっと側にいてやんなきゃなぁ。
ま、離れるつもりもないけど。
そう思っていると、また不意にルフィが話しだした。
「エース、来年の祭りも一緒に行こうな!!」
いつもと変わらない、真っ直ぐで眩しい笑顔。
「当たり前だろ、いままでもずっとそうだったんだから」
あー、これからもずっとこいつと一緒なんだろうなぁ。
そう思うと自然と顔がにやついてくる。
──いくつになっても、祭りって楽しいもんだよな。
隣でいか焼きを頬張る弟を眺めながら、つくづくそう思った。
「エースっ!!!わたあめ!!あ、かき氷!りんご飴!チョコバナナも食いたい!!!!」
「金足りねぇよ。ルフィ、チョコバナナは家で作ってやるから我慢な?」
「え、チョコバナナ作れんのか?」
「お前とチョコがあればな。ほら、わたあめ買いに行くぞー」
「…?おうっ!!」
エースの頭の中に危険なことが想像されているのを知るよしもないルフィは、エースと手を繋いで人ごみの中を歩いて行くのであった。
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