小説
幼い頃の決意#
──エース、おれ、大きくなったらエースとけっこんする!!
…馬鹿、俺とお前は結婚できねぇよ。
なんでだよ!?
俺たちは兄弟だからな。兄弟は結婚しちゃいけねぇって決まってんだ。
……そんなの…────
「ん…?」
深い眠りについていたエースは、朝の眩しい光で目が覚めた。
「…夢か…」
エースはぼんやりとさっきまで見ていた夢の内容を思い出す。
確かあれは、ルフィがまだ小さい頃の会話、つまり昔の夢だった。
ルフィがエースと結婚すると言い張って、兄弟だから無理といっても引き下がらずにわあわあ喚いてた。
呆れたエースに向かって、確か最後にルフィが…何かを言い切ってた気がする。
しかしそこまでの夢は見れず、記憶を辿ってもまったく思い出せなかった。
「…なんだったっけ」
なにか予想外なことを言ってた気がする。まあルフィはいつも予想外な行動をしてくれるのだが…。
少し悩んでいると、部屋のドアが勢いよく開いてなにかがベッドに飛び乗ってきた。
「エーースっ!!!朝だぞ!!」
「おまっ…腹の上乗るんじゃねぇ!!」
いきなり腹の上にのしかかってきたルフィをどかしながら、ふと思いついた様に訊ねてみた。
「なあルフィ、」
「ん?なんだ?」
「お前が小さい頃、俺と結婚する!とか言ってたこと覚えてるか?」
ルフィは少し考えた後、思いついた様に話した。
「おう!覚えてるぞ!!懐かしいなー、あん時兄弟だから無理ってエースに言われたんだ!」
「そうそう。んで、お前あの時最後になんか言ってなかったっけ?」
「なんだよ、覚えてねぇのか?
そんなの、兄弟とか関係ねぇ、決まりがあるならおれがぶっ潰してやる!っつったんだよ!」
しししっ、と笑うルフィの顔を見てエースもつられて吹き出す。
「ははっそうだ!ぶっ潰すとか言ってたな!」
思い出した。
ぶっ潰してやる、ルフィがそう言ったからエースが
「そんなに俺と結婚したいのか?」
と笑いながら聞いたら
ルフィはニカッと笑って
「おう!おれ、エース大好きだ!!ずっと一緒にいてぇんだ!!」
そう答えたんだった。
「あー思い出した。お前あんとき俺にべったりだったもんなあ」
昔を思い出し、懐かしんでいると、
「今もエースのこと大好きだ」
不意にルフィが言った。
「結婚できねぇのはわかった。だからその代わり、おれはずっとエースと一緒にいる」
真っ直ぐに目を見つめて気持ちを伝えてくる。
──こいつには敵わねぇな。
自重気味にくすっと笑いながら、ルフィの髪を撫でてやる。
「ちょっとは成長したな、ルフィ」
「だろ!?」
無邪気に笑う弟の姿。
決まりなんてもん、潰せたらとっくに潰してるよ…
でも、「兄弟」として生まれてきて良かった。
だってそしたら、ずっと繋がってられるだろ?
「俺はお前から離れねぇよ、兄ちゃんだからな」
ずっと一緒にいる
そんなの当たり前だろ…馬鹿。
嬉しそうに笑うルフィを見て、エースはベッドから降りた。
「ルフィ、朝飯食べに行くぞー」
「メシだーっ!って、エース顔洗えよなぁ!」
ずっとずっと、こんな生活が続けばいい。
それが俺たち兄弟の、願い。
そして、あの頃の決意。
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