ショートストーリー
断る理由がみつからなくて[ロスシュラ]
「ねぇシュラ、もう時計はずしたら」
優しい琥珀色の瞳のこの年上の人はいつも、ひとつも無理強いなどすることはなくしかし自分の要求をうまく通す。
「お腹がすいたらご飯を食べて、暗くなったらベッドにもぐりこめばいいじゃないか。せっかく休みなんだからゆっくりしよう」
………特段反論もなかったので言うとおり腕時計をはずす。この時の彼のふっと緩んだ笑みをみたいだけなのかもしれないな、と自分で分析して複雑な気持ちになった。
ここは磨羯宮だが、アイオロスはよくやってきては自分の部屋のように寛いでいる。
「こっち来たら」
ペースに飲まれそうなことにはっと気づいて2秒、断る理由を考えているとアイオロスが笑った。
「素直に時計をはずしたから、流れでだまされるかと思ったけど…バレたか」
「シュラ、断る理由がないならこっちおいでよ」
悔しいけど断る理由などひとつもなかった。
結局いつも、心地よいあなたのペースで。
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