★外へ、煌めく(仁王) 夏の日差しは眩しい。 暑いし、紫外線はシミになるし、お肌が焼けちゃうなんて年頃の女の子には以ての他。 出掛ける時は日焼け止めに、アームウォーマー、日傘と日除け対策は万全。 …だけど。 そんな私を上回るように日向には一切出ず奇怪な行動を繰り返すあの男はなんなの。 「雅治、何してるの。」 「何ってデートじゃろ。」 「彼氏と彼女の距離が5m以上離れてるデートとか見たことないんだけど。」 「ほうか?まあ、距離は遠くとも心はいつもお前に寄り添っちょる。」 「上手いこと言ったって納得しないわよ。」 納得する訳がない。 デートを始めて今まで雅治は私の隣には一度もいない。日陰という日陰を渡り歩き日に当たると溶けてしまう吸血鬼のような行動を繰り返す。 なんの為のデートって隣を歩いて、手を繋いで、いちゃいちゃする為のデートでしょ。 部活より距離が遠いなんて完全におかしい。 「なんでそんな日陰ばっかり歩くの。」 「実は隠しとったんじゃが…俺、吸血鬼だったんじゃ。」 「………で?」 「…日に焼けたくないんよ。」 「女子か。焼けたくないなら日傘差せばいいじゃない。」 「日傘とか女々しかあ。」 「その行動も十分女々しいけどね。」 「拗ねなさんなって。俺と手繋ぎたいならこっち来たらええ。ほら、おいで。」 「日陰渡り歩くデートとか絶対に嫌。」 「我が儘やのう。」 我が儘なのはどっちよ。 クレープ食べたいと言えばここで待ってるから買って来てだの、あの店に入りたいと言えば俺の歩ける道がないだの、徹底して日陰から出ようとはしない。 「日陰歩行のギネスでも狙うつもり?」 「お、それええのお。日常でギネス取れたら得した気分ぜよ。」 「顔色悪いし、ひょろひょろして不健康そうだからあまり栄誉のあるギネスじゃなさそう。」 「さっきからお前さんの口から出るんは嫌味ばっかやのお。お前さんこそ嫌味ギネス取れそうじゃ。」 「そんな不名誉で嫌味なギネスいらない。」 距離感のある日向と日陰でいくら言い合ったって埒が明かない気がしてきた。 「…帰る。雅治も家に帰ったらいいよ。そしたら焼けないし。」 「外でデートしたい言うたんはお前さんじゃろ。」 「こんな事になるとは思ってなかったからね。」 「ふうむ……お、そうじゃ。」 日陰の雅治は拳を掌で打って何かを思い付いた素振りを見せた。 日陰男に今更デートがいい方向に進む提案なんて出せないだろうと来た道を戻ることにした。 「こらこら、待ちんさい。」 聞こえた声と同時に後ろへ引かれた腕。 振り向けばあれだけ頑なに日陰から出なかった雅治。 「お前さんの機嫌直す方法見付けたぜよ。ほら、こっち来んしゃい。」 腕を引いてく身体は日向の下。キラキラ光る銀髪がこれからどこに行くのか期待感を少し高めた。 煌めく彼が導く先は、 (………) (なんじゃ膨れっ面してから。) (なんでここなの。) (いちゃいちゃしたい言うたじゃろ。部屋ならずっとくっついとれる。) (帰る。) (はあ?) (期待した私が馬鹿だった!ばいばい!) (分からんおなごじゃのお。) 結局、いつもの部屋デート。いちゃつくならわざわざ出掛けなくても部屋で十分と思ってる仁王と色んな所でいちゃついて遊びたいと思ってるヒロインが相容れるのは大分先になりそうです 仁王に彼女を上手くエスコート出来る能力とか……紳士柳生に教えてもらえ [*前へ][次へ#] |