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笑恋取勝vol.2
『〜掴みの正門と包帯のイケメン君〜』



「四天宝寺中……ってここ?」

目の前には学校の正門とは言いがたい何ともこう和風な門構えというか、寺というか、どう見たって寺だろう。いやいや、こう見たって、そう見たって寺にしか見えない。確かに寺みたいな名前の学校だけれども。

「これは入るのを躊躇わざるを得ないでしょう。」

躊躇ったところで正門には達筆で『四天宝寺中』と書いてある。
今まで何度も転校してきたけれど、こんな奇抜な学校は始めてだ。
とりあえず躊躇っていても時間が過ぎるだけだし、入れば意外と中は普通かもしんない。

「……行くか。」

深呼吸をして入る準備をする。ここが私の中学生活最後の(多分)学校だ。門構えが寺だからって今さら引き返せない。
大阪の子達はノリがいいだろうし、きっとすぐにいい友達が出来…

「ちょっと待ちや!そこのおじょーさん!」

「は?」

正門へと一歩踏み込んだ瞬間に後ろから待ったの声。

「アカン、アカン!何を普通に入ろうとしてんねん。ここは『掴みの正門』やで?」

「は、はぁ。」

後ろから走ってきて私の目の前に現れたのは銀髪で手に包帯を巻いた男子。大きな怪我でもしたのかな?にしても…この人すっごいイケメン。

「あ。もしかして自分転校生ちゃう?」

「そうですけど。」

「ああ、やっぱりなぁ!うちのモンなら掴みの正門で普通に歩いて入る訳ないからなぁ。」

さっきからちらほら出る掴みの正門ってなんなんだ。掴みながら入る正門?いや、見る限り掴むところはない。

「それと、昨日オサムちゃんから転校生来るで!って聞いててん。どんな子やろ〜って思ってたけど、女の子やったんやな!」

というか目の前のイケメンのよく喋ること。相槌を打つ隙さえ与えてくれないもんだから、私はポカーンと目の前の男子を見るしかない。

「あ、そうそう。んで、この掴みの正門ってのはな、簡単に説明すると朝一番に笑いを取って一日楽しく過ごそう!な正門やねん。せやから、ここを通る際はボケながら通らなアカンねん。」

「ボケるって言われても…」

掴みの正門ってのは笑いを掴め!って意味だったんだ。にしても、転校初日からそんなボケを要求されても…なんせ関東ではそんな事なかったから戸惑うしかない。関西の学校はどこもこうなんだろうか。

「ほな、俺が手本見せたるさかい、よう見ときや!」

「えっ…」

包帯のイケメン君は後ろへ二、三歩下がると勢いよく正門に向かって走り出した。

「これが掴みの正門の通り方や!…んんーっ!エクスタ…−ガンッ!





ちょ、なにしてんねーん!

(イケメンの顔がぁあ!なんで身体張るのにわざわざ顔をチョイスするかなぁ!?)

(ふ…自分中々ツッコミの才能あるやないか。合格や!)

(何が!?)


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