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My ideal way of life.
久々によく眠れた。
そんなことを思いながら、機嫌良く私は昼寝から目を覚ました筈だった。
だが、目を開いて真っ先に見えたのは少女の下着。少女、というか、二十歳を少し過ぎた頃の女性、だけれど。
若いこの子は私の恋人。
恋人になった経緯は色々あるけど、話せば長いのでそれは機会があるときに。
その子はワンピースを着ていて、何故か私が座っているソファーに、私の足を挟み込むようにして足を乗せていた。裾が捲れ上がっているので、真っ先に下着が見えてしまったのだ。本人はそんな事知らずに、ひんやりしているだろうフローリングの床に背中を預けてなんとも幸せそうな寝顔を私に見せつけていた。
この状況、私に罪はないはず。
「…捺」
試しに名前を呼んでみる。捺(ナツ)はピクリと肩を震わせながら目をゆっくりと開いた。
「ん…雪奈、さん…?」
「よく眠れたようですね、捺」
彼女はまだボーっとしているようで、自分の足がどこにあって、背中にある物が何なのかわかっていない様子だった。
ただじっと、私の目を呆けた目で見るだけ。
「捺…。何か、気付きませんか?」
彼女は自分の周りを見渡して、それから、目を大きく開いて裾をその体勢のまま押さえつけた。
でも、その状態だと足を下ろすことも、ましてや上体を起こすなんていう動きは出来るわけがない。
いや、出来ないこともないのだけれど、そうしてしまうと私に下着が見えてしまうので、この子はそれを出来ないでいる。
可愛い人だ。つくづくそう思う。
「どうしました? 固まって」
「いや、その…少し、目を閉じてほしいな、と」
「…どうして?」
もちろん、私はわかっている。けど、どうしてもこの子を見ていると…少しイジメたくなってしまう。
「…雪奈さん…わかってる、でしょう?…本当に意地悪」
少し顔を赤くした捺ほど可愛いらしい生き物に、私はこの百年以上の時の中で出会ったことがない。
「ごめんなさい? あまりにも捺が可愛すぎるから」
私は、捺の反応にすっかり満足したので素直に目を閉じた。
元々、人より耳がいい私だが、目を閉じると更に聴こえるモノが多くなる。捺の息遣いは勿論、布が肌を擦れる音、自分のゆっくりとした心臓の鼓動、筋肉が微かに軋む音、それから、捺の速い心臓の鼓動音。
「もう、開けてもいいですよ」
言われて目をゆっくりと開くと、捺は床に正座していた。
「………………」
しばらく沈黙が続いた。
「おいで」
両手を捺の方に差し出すようにしてから声を掛ける。
捺は私と向かい合うようにして、私の膝に遠慮がちに座った。
腰に緩く腕を回して、私は捺がさっきみたいに落ちないようにしっかり拘束する。
彼女の吐息が首にかかって、少しだけこそばい。
「…ふふっ」
「どうしたんですか?」
急に笑い出した私を捺は不思議がって、顔を向き合わせた。
「…秘密」
ムスッと可愛らしく尖った捺の唇に指を当てながら、私は思う。
私は、この子を失わないためならば、どんなことだってするけれど、彼女がこちらに来るのはやはり嫌だと。彼女には、人として、最後まで生きて欲しい。
それが私の幸せ。今この瞬間、彼女が居る、私にとっては短くも長い、時間の中での幸せだろう、と。
「雪奈さん…」
優しい彼女は、私の心情を察したのか、顔色から読み取ったのか。ひどく優しい声で私を呼んでくれた。
「はい」
彼女が好きだと言ってくれたこの声で、私は返事をした。お互いに目を離さない。
「その…んー…大、好き…です」
「知ってますよ。…私も好きです、捺。大好き、愛してます」
そう言ってから、私は彼女が照れ隠しの言葉を発する前に、その可愛らしい唇を一度塞ぐ。
子供のように、熟れた林檎のような顔をして、まばたきすら忘れたように動きを止めた彼女を頂くために、手で頬を撫でながら、私は願う。
腕の中にあるこの人の重みが、出来るだけ長くありますように。
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