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* 歪曲。歪。いびつ。



そっと彼女の黒髪を撫でる。それはさらさらと私の指をすり抜けて落ちて。
それでも彼女は目を覚まさない。

「寝ぼすけ」

もう時計は朝の11時をさしていて、窓からの土曜の陽は暖かい。
ツンとおでこをつつく。でも、何も反応はなくて、ただ息が繰り返される。
ツーっと、今度は頬を撫でた。やはり起きない。
掛け布団からはみ出た肩が酷く扇情的で…。

今度は首に手をかけて、私がつけたひとつだけの痕をゆっくりとおす。次は力を少し抜いて、それからまた力を入れる。
指がめり込んでいるように見えた辺りで、彼女がばっと起き上がった。

「…は…っ…がは、…はっ……はぁ…」

苦しそうに咳き込む彼女を私はただただ見るだけで、自分の感覚が麻痺していることはわかるのだが、どうにかしようという気にはなれない。
彼女は深呼吸をしながら涙の溜まった目で私を見て、私はというと、たぶん、笑ったのだ。

「おはよう。よく眠れた?」

キスをしようと近付けた唇は、彼女の手に優しく塞がれた。

「…口の中、血が溜まってるから…」

どうやら、昨日の名残があるようで。
けれど、私はそんなこと関係なしに彼女の手を掴んでそれから彼女の中を弄った。

鉄の匂いだ。彼女の血の香り。
細胞から何から、私の全てが喜んでいる気がして、私はもっともっとと彼女の腕に爪を立て、血が滲む程に力を加えた。

それから色々血生臭いのか艶めかしい展開だったのか。
ただ、人にはあまり理解されないようなことをしたのはよく覚えている。

私は彼女が好きで好きでたまらなくて、彼女の他の人間はどうでもよくて、彼女につけた傷が消えない内に新しい傷を付けるのが好きで。
彼女は彼女で、私に付けられる傷がお気に入りらしく、私をわざと挑発して、それに私はまんまとのせられ苦笑とはとても言えない笑みを浮かべながら彼女にせまる。

楽しくて仕方がない。いっそその白い首を彼女のモノで赤く染めてみたいだとか。

暴力的かつ耽美的な思考が私の頭の中で、せりあって、はなから私には彼女の体やら心というものに傷を付けないなんていう勿体無い考えはないのだ。

なにがどうして、私と彼女がこんなことになってしまったかは知らないけど、それすら当の本人たちにはどうでもよく。
興味があるのは互いの体と考えだけ。

傷を付けられたらその人のことが頭から離れないように、私が彼女に傷を付ければ、彼女は私だけを見てくれる。

捻れ捻れて私にもなんだかよくわかりません。

歪んでるんだよ、なんて、言われなくてもわかってるけど。
また明日も、彼女が私の隣にあるのなら、私はそれだけでいいのです。



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